理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 20
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内部障害系理学療法
心疾患患者における余暇時間の身体活動と下肢筋力との関連についての検討
*武市 尚也井澤 和大森尾 裕志平木 幸治渡辺 敏長田 尚彦大宮 一人
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抄録

【目的】
心疾患患者における余暇時間での身体活動や運動の促進は,冠動脈狭窄退縮や罹患後の再発予防(Hambrecht et al, 1993, 2004),健康関連QOLの維持・向上(Izawa et al, 2004)に寄与する.一方,最高酸素摂取量(Peak V(dot)O2)や下肢筋力などは生命予後規定因子の一つに挙げられ,これらは相互に関与する.下肢筋力は,日常生活活動向上に関わる一要因であるが,余暇時間での身体活動(Leisure time physical activity: PA)に影響をもたらすか否かについては定かではない.
本研究の目的は,余暇時間での身体活動に対する下肢筋力トレーニングの臨床的意義について検討することにある.
【方法】
1. 対象は,2001年5月から2006年5月の間に,急性心筋梗塞(AMI)発症または心臓外科手術(CS)後,当院での急性期プログラムを終了し,1か月時点において心肺運動負荷試験(CPX),下肢筋力ならびにPA測定を行った心疾患患者50例(年齢:62.0±9.4歳,男性:84%)である(当大学 倫理委員会,承認356号).
2. 基礎疾患および属性に関する情報は,診療記録より調査した.Body mass index(BMI)はCPX時の身長と体重値より算出した.
3. PAの測定には,スズケン社製カロリーカウンター用いた.PAはCPX後1週間測定し,1日の歩数の1週間の平均値を算出した値を指標とした.
4. 下肢筋力はBIODEX社製SYSTEM 2にて,膝伸展ピークトルク値を体重で除した値の左右平均値(KPT)を指標とした.
5. Peak V(dot)O2はCPXより求めた.
6. 解析にはPearsonの積率相関係数とStepwise重回帰分析を用いた.統計学的有意差判定の基準は5%未満とした.
【結果】
1. 基礎疾患の割合はAMI 86 %,CS 14 %であった.各指標の平均値はBMI 23.4±2.8 kg/m2,PA 7893±2914歩,KPT 1.72±0.36 Nm/kg,Peak V(dot)O2 24.8±5.95 ml/kg/minであった.
2. PAと各指標については,PAとKPT(R = 0.41, P = 0.03),Peak V(dot)O2(R = 0.32,P = 0.02)との間に有意な正の相関を認めた.一方,PAと年齢,性別,BMIの間には相関はなかった.PAを従属変数,年齢・性別・BMI・Peak V(dot)O2・KPTを独立変数とするStepwise重回帰分析の結果,PAを規定する因子としてKPTが抽出された(R = 0.41,R2 = 0.17,P = 0.00).
【考察】
PAとKPTとの間には,有意な正相関を示し,KPTがPAを規定する因子の1つである可能性が示された.以上より,心疾患患者における下肢筋力トレーニングは運動耐容能向上のみならず,余暇時間における身体活動をも向上させる可能性が示唆された.
【まとめ】
下肢筋力の改善は,身体活動量を向上させる可能性がある.

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© 2007 日本理学療法士協会
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