理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 200
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内部障害系理学療法
心疾患患者における上肢筋力と上肢筋量および呼吸機能との相互関係についての検討
*井澤 和大渡辺 敏横山 仁志平木 幸治森尾 裕志武市 尚也岡田 一馬石阪 姿子山川 梨絵長田 尚彦大宮 一人
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抄録
【目的】近年,心疾患患者に対する下肢筋力trainingの有用性に関する報告が散見される.しかし,日常生活活動に際しては上肢機能も関与する. 先行研究(Izawa et al,2006)にて我々は最高酸素摂取量(Peak VO2)の一規定要因として, 上肢筋力の関与を示した.一方, 心疾患患者における呼吸機能の低下が指摘されている(Mancini et al,1994,高橋ら,2005).そこで我々は,‘上肢筋力と呼吸機能とは相互に関連する‘という仮説を立て, その検証をすることで,呼吸機能に対する上肢筋力trainingの臨床的意義を見出すことを本研究の目的とした.
【方法】
1.対象は,2006年4月から10月の間に当院リハビリ部に心肺運動負荷試験(CPX)の依頼があった連続症例127例中,発症または術後1ヵ月時点での急性心筋梗塞(AMI),冠動脈バイパス術(CABG)後の外来通院患者および慢性心不全(CHF)患者69例である.69例中,後述する各指標の測定を行った63例(年齢,61.7±12.7歳,男性78%)を最終対象者とした(当大学倫理委員会承認340号).
2.属性と基礎疾患に関する情報は, 診療記録より調査した. Body mass index(BMI)はCPX時の身長と体重値より算出した.
3.呼吸機能の測定には, CHEST社製VITALO POWER KH-101TM, MICROSPIRO HI-601を用い,最大吸気圧(MIP),肺活量(%VC),一秒率(FEV1.0%),一秒量(FEV1.0)を測定後, 最高値を指標とした.上肢筋力指標としての握力はJAMAR Hand Dynamometerを, また上肢筋量の測定にはMuscleアルファを用い,各左右の平均値を算出した. Peak VO2 はCPXより求めた.
4.解析には,Pearsonの積率相関係数とStepwise重回帰分析を用いた.統計学的判定の基準は5%とした.
【結果】1.基礎疾患はAMI 43%,CABG16%,CHF,41%,BMIは24.2±4.1 kg/m2であった.呼吸機能はMIP 84.8±33.1cmH20,%VC,85.6±18.3%, FEV1.0%,90.7±19.6,FEV1.0,81.56±6.5であった.上肢筋力は, 35.8±10.2kg, 上肢筋量は,1.1±0.4kg,Peak VO2 は19.3 ml/kg/minであった.
2.上肢筋力と各指標との関連は,上肢筋力とMIP(r=0.54,P=0.01),上肢筋量(r=0.42,P=0.01),BMI(r=0.32,P=0.01), PeakVO2(r=0.41,P=0.01)に正の相関を認めた.しかし%VC,FEV1.0%,FEV1.0には関連はなかった.さらに上肢筋力を従属変数,その他の指標を独立変数とするStepwise回帰分析の結果,上肢筋力の規定因子としてMIPと上肢筋量が抽出された(R=0.60,R2=0.40,P=0.01).
【考察】上肢筋力と呼吸筋力および上肢筋量は相互に関係する可能性があることから,心疾患患者における呼吸筋力に対する上肢筋力trainingの臨床的意義はあるものと考えられた.

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© 2007 日本理学療法士協会
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