理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 350
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生活環境支援系理学療法
八重山地域におけるリハビリテーションの現状と課題
*伊能 良紀崎山 加奈西原 美樹比嘉 育子崎浜 秀一清水 かつみ矢崎 真一白木 富幸
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抄録

【はじめに】本来リハビリテーション(以下、リハ)はすべての人に受ける権利が有る。しかし、様々な問題によりリハを受ける事ができない地域住民も存在する。この中の1つが八重山地域である。今回、八重山地域が抱えるリハの問題を報告する。
【現状】八重山地域は、沖縄本島から南西約400km(東京―大阪間と同距離)、新潟市から南西約2060kmに位置し、石垣市、竹富町、与那国町の1市2町から構成される。石垣市は石垣島からなり人口約47,000人、竹富町は6の有人島(石垣市から6~56km)からなり人口4,200人、与那国町は与那国島(石垣市から127km)からなり人口1,700人である。リハを受ける事ができる石垣市の医療・介護施設は、県立の総合病院1、民間病院2、有床診療所2、老人保健施設2、特別養護老人ホーム1、デイケア4、身体障害者療護施設1である。以上の医療・介護施設にPT14名、OT5名、ST1名が勤務している。竹富町・与那国町にPT/OT/STは常勤しておらず、リハを受けられる医療・介護施設はない。
【問題点】八重山地域の問題点の1つ目は、リハを受ける機会が少ないことである。特に竹富町・与那国町はリハを受けられる医療・介護施設が無く、船や飛行機で石垣市まで通うか入院・入所をするしかない。平成17年度までは両町が行っている機能訓練事業に対し、地域リハ推進事業からPT/OT/STを派遣していた(平成16年度17回、平成17年度10回)。しかし、国庫補助金の削減により県が地域リハ推進事業を終了し、機能訓練事業も同時期に終了したため両町では定期的なリハを受けることができなくなった。2つ目は、各医療施設で行われるリハが不十分な事である。病気を発症し医療施設に入院しても、リハが十分行われないまま退院させられてしまう事が多い。その結果、家庭へ帰っても日常生活を送れず再入院・施設入所となるケースもある。3つ目は、人員不足である。PT/OT/STが揃っているのは当院のみである。他の医療・介護施設はごく少数のPT/OTで行っている。そのため、竹富町・与那国町に訪問リハ等をするほど人的余裕がない。竹富町・与那国町はPT/OT/STが常勤していない。4つ目は、地理的環境である。八重山地域は沖縄本島と約400km離れ周辺を海で囲まれているため、他の地域からリハを提供することは容易でない。さらに、地域内も船や飛行機等の移動が必要となる。
【終わりに】平成18年4月の医療・介護保険改定、地域リハ推進事業終了を受け、当院が提供できるリハサービスとして、平成18年10月に八重山地域初の回復期リハ病棟を開設した。しかし、八重山地域の問題点を解決するためには、民間施設・当該地域だけの努力では限界があり、県及び国の支援が必要である。今回上げた問題点が、今後の医療・介護保険の改定、行政に生かされればと願う。

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© 2007 日本理学療法士協会
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