理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 351
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生活環境支援系理学療法
播磨町における介護予防事業(第二報)
*古川 裕之延安 雅子坂本 佳恵岩澤 実希子山田 実東野 江里上原 稔章坂田 敏郎
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抄録

【はじめに】2006年4月より本格的な介護予防サービスが開始し、それに伴い、各地方自治体における介護予防事業も積極的に行われるようになってきた。介護予防とは、高齢者ができる限り要介護状態に陥ることなく、健康でいきいきした生活が送れるように支援することと定義されており、単なる身体機能の向上にとどまることのない包括的な介護予防事業が求められている。今回、兵庫県加古郡播磨町の介護予防事業にて6ヶ月の運動療法を施行し、初期評価時の値が低い者ほど運動療法の効果が認められたため報告する。

【方法】参加者は事前検診にて、運動機能、栄養、口腔機能、閉じこもり・認知症・うつの予防・支援のいずれかに該当した76名の内、6ヶ月間の運動療法を完遂した47名(男性1名、女性46名)とした。参加者の年齢、身長、体重の平均値±標準偏差はそれぞれ81.3±6.4歳、147.9±6.4cm、50.3±7.3kgであった。測定項目は握力、開眼片脚立位、Functional Reach Test(FRT)、Timed Up and Go test(TUG)、5m歩行速度、5m歩行歩数とし、それぞれの変化量を算出した。その後、各変化量を従属変数とし、独立変数を初期評価の値、年齢、日頃の活動への参加状況として重回帰分析を行った。なお参加者は測定の趣旨に同意のうえ参加した。

【結果】すべての項目において、初期評価時の測定値がその変化量に対して有意に影響を与えていた(p<0.05)。また、年齢は5m歩行速度、TUG、握力(左)に対して有意な影響があった。各群は握力(右)、片脚立位(左)に対して有意に影響が認められた。

【考察】播磨町における介護予防事業に参加し、高齢者の身体特性と運動療法の効果について調査した。すべての測定項目において、初期評価時の測定値が低いものほど、6ヶ月の運動療法後の変化量が大きいということが分かった。また、日ごろの活動への参加如何があまり測定値に影響していないことも明らかとなった。このことから、日ごろ家に閉じこもりがちな要介護・要支援予備軍の高齢者でも運動療法を行うことによって身体機能を改善させることができる可能性が示唆された。今後の課題は、検診等にも訪れない高齢者の中に隠れている虚弱高齢者をいかにpick upし、介護予防事業に参加させることができるかがあげられた。医療・行政・地域のさらなる連携、制度作りが必要不可欠である。

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© 2007 日本理学療法士協会
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