理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 392
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生活環境支援系理学療法
高齢者におけるバランス能力が歩行速度に及ぼす影響
*宮坂 淳介市橋 則明池添 冬芽中村 孝志
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キーワード: 高齢者, バランス, 歩行
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抄録

【目的】高齢者の歩行能力に関しては、歩行と筋力との関係を考察している報告は多くみられるが、バランス能力との関係を考察した報告は少ない。本研究の目的は、施設に入所している虚弱高齢者を対象に、歩行能力と静的・動的バランス能力および下肢筋力との関連について明らかにすることである。
【対象と方法】ケアハウスに入所している歩行自立レベルの高齢者31名(男性12名、女性19名、平均年齢84.2±6.1歳、平均身長148.7±11.0cm、平均体重49.9±8.4kg)を対象とした。静的バランス能力については、静止立位時の重心動揺、開眼および閉眼での片脚立位保持時間を測定した。動的バランス能力については、最大随意重心可動距離、Functional Reach(以下FR)およびBalance Reach Leg(以下BRL)を測定した。なお、静止立位時の重心動揺はアニマ社製重心動揺計を用いて開眼・閉脚立位にて20秒間保持した際の重心動揺総軌跡長および面積を測定し、最大随意重心可動距離は同じく重心動揺計を用い開脚立位で前後・左右方向にできるだけ大きく重心移動した際の足圧中心最大振幅値(以下、前後および左右の最大重心可動域)を測定した。BRLは一側下肢を前方、後方および側方へ最大リーチさせた際の距離を測定した。また、下肢筋力については、膝関節屈曲および伸展筋力を椅座位膝関節90°屈曲位で、股関節伸展筋力を股関節0°伸展位でそれぞれ最大等尺性収縮にて測定した。歩行能力として10m最大歩行時間を測定し、10秒以内に歩行できるか否かで高速群(n=18名)と低速群(n=13名)の2群に分類し、各バランス能力および筋力についてそれぞれ対応のないt検定を用いて統計処理した。
【結果と考察】対象者の10m最大歩行時間は10.6±4.6秒であった。歩行高速群と低速群との間に有意差が生じたのは、静的バランス能力では重心動揺面積、開眼片脚保持時間のみ、動的バランス能力ではすべての項目、すなわち前後および左右最大重心可動域、FR、前方・後方・側方BRL、そしてすべての下肢筋力(膝屈伸筋力・股伸展筋力)であり、いずれも高速群の方が成績は良かった。静的バランス能力である重心動揺総軌跡長や閉眼片脚保持時間では歩行高速群と低速群との間に有意差はみられなかった。本研究の結果、施設入所高齢者の歩行能力には下肢筋力とともに、バランス能力、特に随意的に重心移動をコントロールする動的なバランス能力が必要であることが示唆された。

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© 2007 日本理学療法士協会
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