理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 444
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生活環境支援系理学療法
当施設における歩行能力と外出形態の関連性について
*上村 麻代高綱 義博韮澤 力
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抄録

【はじめに】当施設は家庭・社会復帰を目標に、日常生活能力の維持・向上訓練を実施している訓練施設(53床)である。家庭・社会復帰のためには、屋外歩行の自立が重要であると考え、東京都心身障害者センターの先行研究を参考に、屋外移動訓練の基準を作成し、重点を置いて取り組んできた。今回、屋外訓練基準の妥当性を検討する為に、屋外移動訓練対象者の歩行能力に着目し、検討したので報告する。

【方法】対象は平成11年4月から18年3月までに当施設入所利用した歩行自立者52名、男性44名、女性8名、年齢は20歳から64歳、平均年齢50.2±9.9歳である。診断名は脳血管障害46名、頭部外傷6名である。方法は10m歩行速度(最速歩行12mの内、中間10mの所要時間)、30分間歩行距離(屋内整地普通歩行での距離)を測定し、都センターの基準値を参考に、外出形態を3つに分けた。バス等公共交通機関を利用した外出可能基準を 10m歩行速度10秒以内、30分間歩行距離1km以上としてバス等利用群、歩行外出可能基準を10m歩行速度23秒以内、30分間歩行距離400m以上として歩行外出群、これ以下を車椅子外出群として、屋外訓練(大型スーパーでの買物、バスを利用した駅周辺百貨店での買物)を行い、15項目(1道路の横断、2車の乗降、3エレベーター・エスカレーターの乗降、4階段、5段差、6スロープ、7トイレ動作、8買物動作能力、9買物知的能力、10金銭取扱、11準備・マナー、12会話、13援助依頼、14公共交通機関利用動作能力、15公共交通機関利用知的能力)について評価し、実際の外出形態を決定した。各群間の比較は、Kruskal-Wallis検定を用い有意水準5%未満とした。

【結果】10m歩行速度の平均では、車椅子外出群(19人)38.7秒、歩行外出群(11人)18.3秒、バス等利用群(22人)9.8秒であった。以下、同順で30分間歩行距離の平均では、220m、678m、1333mであった。15項目屋外訓練評価では、車椅子外出群1~8,14の項目が不可能、歩行外出群1,4~6,14の項目が不可能、バス等利用群では15項目全可能であった。また、各群間で有意差がみられた。

【考察】都センターの基準を参考に、歩行による外出可能基準を設定し、屋外訓練を実施した結果、全対象で安全に行うことができたことから、10m歩行速度と30分間歩行距離は当施設における屋外訓練基準として妥当性があると考えられる。また15項目屋外訓練評価から、車椅子外出群は疲労感と買物動作等歩行と動作が結びついた行為が不可能、歩行外出群は歩行速度が遅く道路横断不可能で段差昇降等応用歩行が不可能、バス等利用群は全項目可能であると言え、屋外訓練項目を評価することで外出形態を予測できる。
よって、外出可能基準に屋外訓練15項目を加えることによってより外出形態が明確になると考えられる。

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© 2007 日本理学療法士協会
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