理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 446
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生活環境支援系理学療法
療養通所介護におけるPTの関わり
ALS患者を担当して
*今井 伸也九里 美和子南 千佳子宮内 吉則斉藤 裕子畑野 ひろ子
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キーワード: 療養通所介護, 訪問看護, ALS
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抄録

【目的】
H18年4月の介護報酬改定により、難病やがん末期の要介護者など、医療ニーズと介護ニーズを併せ持つ在宅の中重度者への通所サービスとして「療養通所介護」が創設された。当訪問看護ステーションは、4月より同サービスを開始している。今回、訪問看護(PT)を提供している患者の中で、療養通所介護を併用する症例を経験する機会を得たので、PTとしての関わりの観点から報告する。
【症例紹介】
ALS(65歳)男性、妻と二人暮らし:平成17年2月頃より構音・嚥下障害、筋力低下がみられ、7月上記診断。平成18年5月30日入院し、6月16日PEG造設。6月19日気管切開(人工呼吸器)。10月17日退院。当初、表情は硬く、自発的な会話(筆談、ジェスチャー等)は少なかった。ROM-tは右肩関節屈曲制限、右手指伸展制限が見られた。四肢の粗大筋力は3~4レベル。易疲労の為、長時間の座位保持や約5~10m以上の歩行は困難。基本動作は監視レベル。ALS重症度分類は球型で重症度4。ADL(BI)は50/100。QOLはSF-8で身体的健康度(PCS)は22.87、精神的健康度(MCS)は25.10だった。
【経過】
退院後より在宅サービスを開始した。訪問看護(Ns)は10月17日より5回/週、訪問看護(PT)は10月19日より1~2回/月。訪問看護(PT)は評価を中心にROM-ex、呼吸リハビリ、筋力増強訓練、指導(患者、介護者、Ns、介護員等)、環境整備、福祉機器の紹介を行った。並行して療養通所介護が10月26日より1日/週開始。療養通所の中でPTは、運動療法、通所スタッフに対してアプローチ(ROM-ex、呼吸リハビリ、筋力増強訓練など)の指導やリスク管理の説明、通所での生活やレクリエーションの助言等を行った。
【結果】
身体機能は初期と著変は無かったが、ADL面やQOL、精神機能の改善が見られた。表情は柔和になり、自分の気持ちを話すようになった。
【考察】
療養通所介護を訪問看護ステーション(PTのいる)と併設することによって、下記のサービスの向上につながった。リハビリ頻度・活動量が増えた。ニーズ・生活状況の評価を行い易く、「出来るADL」と「しているADL」を確認し、差異をチームアプローチで改善する事が出来た。実際場面で患者のリハビリを療養スタッフが立ち会うことで、質の向上につながった。信頼関係の向上、精神面のサポートにつながった。Ns中心の施設の為、リスク管理が行い易かった。本人のストレス緩和や介護レスパイトにつながった。
ALSは、一般的に発症すると約2-3年で死亡するとされている。今回の症例より、在宅療養を継続しQOLの向上に結びつける為には、訪問看護(PT)だけでなく療養通所介護を併用することは効果があると考えられた。また、チームの中でPTの専門性を活かすことにより、リハビリの質の向上が期待できる事を認識した。

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© 2007 日本理学療法士協会
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