理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1043
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生活環境支援系理学療法
椅子座位での良好な姿勢と円背姿勢での膝伸展力の比較研究
*守山 優祐山梨 皓子徳田 良英
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抄録
【目的】高齢者の加齢変化として特徴的な円背姿勢がある。本研究は,その姿勢変化によってどれだけ筋出力が変化するのかを,健常者を対象として,円背姿勢と膝伸展力に着目して検証した.また,2段階の座面高さを設定し,円背姿勢での適切な座面高さの検証も行った.【方法】対象は健常成人24名(男性9名,女性15名;21.8±1.1歳)とした。測定条件として,姿勢は,座位にて1)姿勢を正した(脊柱伸展位)姿勢と,2)強制された円背姿勢の2種類を設定した.円背姿勢の強制は草刈らが行った帯を用いた方法で行い,固定した.膝伸展筋力の測定には,J- TECH社製COMMANDER POWER TRACK2を用い,測定値が一定となるように独自に機器を固定して膝伸展力を測定した.次に,座面高さを異なる椅子を用いて1)通常椅子の42cm座面高さと2)各人の身長に合わせ,非検査足のつま先が設置する高い座面の高さに設定し,それぞれの高さで,各姿勢2回ずつ膝伸展力を測定し,2試行での最大値を使用した.解析方法は各条件における姿勢での膝伸展筋力に関するWilcoxon検定を行ない.有意水準は5%とした.【結果】各坐面高さにおいて正常姿勢と円背姿勢で,膝伸展力が円背姿勢において有意に発揮されにくかった(P<0.05).また,円背姿勢においてどれだけ低下したか検証したところ,各坐面高さにおいて約16%の筋力低下がみられた.坐面高さの違いでの膝伸展力を比較した結果,正常姿勢,円背姿勢ともに有意差は認められなかった(p>0.05).【考察】円背姿勢で約16%の膝伸展筋力が低下したことの要因として,円背姿勢になり坐位姿勢のアライメントが崩れたこと,背筋群の過緊張や腹筋群の弛緩,重心の後方偏移,胸郭運動の制限による呼吸機能への影響,また大腿直筋が伸張されたことなどが考えられる.また,円背姿勢で筋力低下がないにも関わらず,正常姿勢よりも筋出力が低下するということは,逆を言えば円背姿勢の予防に対しての運動療法を行えば,膝の伸展筋力は維持されるということが言える.また,正常姿勢と重心線が変わるため高い座面の方が筋力が発揮されやすいと考え,円背姿勢における適切な坐面高さを膝伸展筋力で比較したが,統計学上での有意差が認められなかった.だが,高い座面で2/3の被験者が筋力の低下傾向がみられた.要因として,各坐面高さで測定足の設定条件を一定としたため高い坐面ではバランス能力も要求され,十分な筋出力の結果を得ることができなかったのではないかと考える.【まとめ】本研究結果より,円背姿勢での膝伸展筋力が正常姿勢よりも発揮されにくくなることが分かった.今後は,実際に円背姿勢で立ち上がり動作を行い,適切な座面高さの検討を進めていけたらと考える.
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© 2007 日本理学療法士協会
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