理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1017
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物理療法
部分浴の温熱は深部までの加温効果を持つ
*大重 匡國生 満鄭 忠和
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キーワード: 部分浴, 表在熱, 前腕浴
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抄録

【目的】水治療法は、温水の伝導を利用した表在熱による治療である。水治療法の治療手段である部分浴は、温水で身体の一部を加温する治療である。部分浴の温熱は、熱伝導作用と皮膚表面の温められた血液の循環作用を示すことになるが、皮膚表面の温められた血液の循環作用についての報告はない。そこで今回は、部分浴としての右前腕浴の効果と右上腕部を100mmHgの加圧にて皮膚血流を駆血した右前腕浴の効果を深部体温、皮膚血流、循環動態の面から比較してその効果を明らかにすることを目的とする。
【方法】対象は、健常若年男性10名(平均年齢21.4±1.0歳)である。方法は、椅子座位で充分な安静後に43°Cの単純泉に右前腕部の部分浴(前腕浴)を15分間行い、日を変えて右上腕を100mmHgの加圧し表在の血流を駆血した右前腕の部分浴(駆血前腕浴)を15分間行った。なお、前腕浴と駆血前腕浴の施行はランダムに日を変えて行った。測定項目は、舌下温(深部体温)、表在温(額、頚、上腕、腹、大腿、足背)、部分浴を施行した側の上腕皮膚血流量、心拍数、血圧、主観的温感強度である。
【結果および考察】舌下温は前腕浴が駆血前腕浴より有意に上昇し、前腕浴で約0.4°C、駆血前腕浴で0.2°C上昇した(p<0.01)。表在温は、上腕で前腕浴が1.3°C上昇し、駆血前腕浴では0.2°Cの上昇した(p<0.05)。さらに足背の表在温で前腕浴が2.8°C上昇し、駆血前腕浴の上昇は1.2°Cであった(p<0.05)。前腕浴と駆血前腕浴で有意差があったが、ともに深部体温や加温した部位より離れた表在温の上昇が認められたことから、部分浴の温熱は単なる表在熱ではなく、深部まで加温効果を持つと考える。皮膚血流量は、入浴前から前腕浴で1.3倍に増加し、駆血前腕浴で1.4倍となった。駆血前腕浴が前腕浴より皮膚血流が多くなった要因は、皮膚血流の測定部位の末梢で表在血流が駆血されたため、駆血で中枢部に表在血流が還流されたためと考える。部分浴の循環動態として、心拍数は前腕浴と駆血前腕浴は共に約6~7bpm増加したが著明な変化は認めなかった。血圧は前腕浴でわずかに収縮期血圧と拡張期血圧が低下したが血圧値には著明な変化は認めなかった。これにより、湯温43°C部分浴の身体への負担は非常に軽い結果となったと考えられる。部分浴15分経過時の主観的温感強度は、ちょうどよい温感であった。43°Cの温度設定は、通常よりやや高い温度設定であったが、被験者の温感で“熱い”と回答した者は1名もいなかった。
【まとめ】温熱効果は、前腕浴が駆血前腕浴より舌下温、上腕・足背の表在温で有意に上昇させたが、駆血前腕浴でも、舌下温と上腕・足背の表在温は上昇した。前腕浴の表在温で最も大きく変化したのは、前腕部より最も遠い足背部で2.8°Cの上昇であった。心拍数や血圧の循環動態には著明な変化は認めなかった。なお本研究は、本大学の倫理審査にて承認をされた研究である。

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© 2007 日本理学療法士協会
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