理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1020
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物理療法
頚部筋に対するホットパック療法が摂食・嚥下機能に与える影響についての予備的研究
*後藤 吾郎宮崎 仁斉藤 秀之小関 迪
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抄録


【目的】
長期臥床によって頸部が後屈し,僧帽筋など後頸部の筋が短縮し,頸部自体が拘縮を起こしてしまうことを我々は経験する。今回筋硬度計を用いた後頚部筋(僧帽筋上部線維)の硬さに着目し、ホットパック療法前後の筋硬度・経皮的酸素飽和度・呼吸数・頸部の関節可動域・摂食機能・嚥下機能などの変化を検討したので報告する。

【方法】
当院療養病棟に入院している患者の中で発熱等により実施が不適当な者を除いた6名を対象とした。マルホ社製ホットパックを使用して20分間ホットパック療法を実施した。その前後で僧帽筋上部線維の筋硬度をトライオール社製筋硬度計NEUTONE TDM-N1を使用して測定した。筋硬度計の使用にあたっては,検者間誤差をなくすため同一検者とした。また試行間での誤差を減らすために検者は事前にいくつかの対象物で練習を行った。測定部位は全て僧帽筋上部線維とし、任意の点の中から一番高値である部位を採用した。測定は5回実施し、最大値と最小値を除く3回分の平均値を測定値とした。また施行前後で経皮的酸素飽和度・呼吸数・頸部の関節可動域を測定した。摂食・嚥下機能として食事形態・反復唾液嚥下テストなどを評価した。

【結果】
対象者の内訳は男性3名,女性3名,平均年齢は74.0±13.9歳であった。筋硬度は全例改善を示し,実施前の平均値は21.6±1.7,実施後は15.1±2.0となり有意な改善を認めた(p<0.05)。しかしバイタルサインや関節可動域、摂食・嚥下機能などに有意な変化は認めなかった。

【考察】
僧帽筋上部線維での筋硬度はいずれの患者にも改善したためホットパックによる介入は一つの手段として有効であると示唆された。またバイタルサインに大きな変化がなかったことからホットパックが比較的安全に実施出来る物理療法であることも再確認出来た。今回の結果では摂食・嚥下機能に大きな変化は見られなかった。今後の課題として介入回数を増やして変化が見られるのか、運動療法と組み合わせた場合ではどうなるのか継続して調査していく必要がある。また今回の調査では僧帽筋上部線維の任意の点において筋硬度を測定したが,その中でも頚部の可動域改善に向けてどこの点を評価すべきなのか測定箇所の同定をしていく必要があると考える。



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© 2007 日本理学療法士協会
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