理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 41
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教育・管理系理学療法
1年後の理学療法臨床実習成績にみる早期体験実習の意義
*樋口 由美岩田 晃奥田 邦晴林 義孝場谷 玲福田 明雄駿河 歩
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抄録
【目的】本学において、専門知識を学び始める前の学生に対し、病院および介護老人保健施設(以下、老健)での早期体験実習を開始して7年を経た。今回は、早期体験実習の意義について、1年後に実施される見学を主とした臨床実習の成績から考察することを目的とした。
【方法】同じ入試制度下で入学したX年度入学26名とY年度入学25名を解析対象とした。早期体験実習の概要:1年前期終了後に病院と老健で、1日ずつ体験型実習を実施した。質問紙調査: 15項目、4択回答、一部記述の質問紙調査(無記名)を各々終了後当日に実施した。分析方法:早期体験実習後の質問紙調査結果と、1年後の臨床実習評定分布について、2学年間の集団比較を行なった。
【結果・考察】1)男女比:X年男子61.5%、Y年52.0%であった。2) 1年後の臨床実習評定分布:X年は評定A=100%、Y年は評定A=80%、B=8%、C=8%、D=4%と、Y年において評定Aに達しなかった学生が20%(5名)に上った。3)質問紙項目のカテゴリー分類:因子分析により抽出した6因子からX,Y年度間の比較検討をした。なお、因子名称は【】内に表記した。【理学療法士へのモチベーション】低下傾向:病院実習後の「PTになりたいか」の問いに対し、X年は「非常になりたい」96.2%、一方Y年では80%であった。「面白い体験だったか」には、老健後のX年は「非常に」96.2%、「まあまあ」3.8%に対し、Y年では「まあまあ」が28%に達した(p=0.021)。【治療対象者への理解】不足:患者イメージ、老人イメージに関する問いに対し、特に老健での回答に大差を認めた。X年の約6割が患者イメージが変わった一方で、Y年は8割近くが「変わらない」と回答した(p=0.011)。老人へのイメージも同傾向であった。【臨床への適応性】低下傾向:X年に比べY年では「コミュニケーションが非常に難しかった」と回答した学生が、病院、老健ともに多かった(病院;X15.4%、Y32.0%、老健;X26.9%、Y44.0%)。また、実習が辛かったと回答した学生も、Y年では病院64.0%、老健48.0%に上った。【PT理解】不足:X年の7割以上が、病院でのPTイメージが変わったと回答したが、Y年では2割に留まった(p=0.001)。老健での回答もX年の6割が「変わった」のに対し、Y年の8割が「変わらなかった」(p=0.009)。その他、【組織理解】【対象者の周辺環境を知る機会】の2因子が抽出された。
【まとめ】早期体験実習時において、モチベーションや臨床への適応性ならびに、治療対象者やPTをより理解しようとする姿勢が低い集団は、1年後の臨床実習評定が低下する傾向が認められた。早期体験実習は、その後の学習方向性を強化する役割の他に、臨床適性のスクリーニング的側面を有する可能性が示唆された。
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© 2007 日本理学療法士協会
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