抄録
【はじめに】
理学療法士養成施設において臨床実習までに学生をどのレベルまで教育するのか、また実習を通してどのように教育していくのかが大きな課題の1つである。今回、専任教員の定員不足のために指定校取り消し寸前の専門学校の教育に関わる機会を得た。不遇な状況下で実習に臨む学生の心理状態を確認しながらカリキュラム進行を図った。特徴的な心理状態を示したこと、また授業進行について若干の示唆を得たので報告する。
【対象及び学校の状況】
対象は、平成18年度理学療法学科第3学年の男性20名、女性13名であり、平均年齢は男性24±4.5歳、女性21±0.5歳であった。平成18年4月より法定通りの人数の専任教員が着任した。
【方法】
平成18年3月に2週間の評価実習、5月から7月にかけてと8月から10月にかけての各9週間の臨床実習を実施した。臨床実習間はセミナーと個人面談を実施するため4週間とした。評価実習後及び2回の臨床実習前後に蓄積的疲労徴候調査(CFSI)を実施して心理状態を確認した。また、全実習終了後に実習前あるいは実習間に行った特別講義について学生にアンケートし、実習への寄与を検討した。
【結果】
クラス全体の心理状態について不安徴候は実習の進行とともに減少し、抑うつ状態では1期後は実習前より増加していた。2期後は実習前より減少していた。一般的疲労感は各実習後に上昇した。一般的疲労感は1期の方が高かった。イライラの状態は1期前と比較して他は低下していた。意欲の低下では実習後にわずかな増加が見られた。気力の減退は1期後に上昇し、2期後に評価実習後と同じ程度まで減少した。慢性疲労は各実習後に上昇した。身体不調は2期前のみ減少したが、他は不変だった。
徒手医学やPNFなどの特殊技術に時間をかけても3分の1から2の学生は実習で使用できなかった。実習間に行った神経変性疾患や中枢神経疾患治療の基本手技は学生の興味も高く、実習にて参考になっていた。記録の書き方の指導については評価実習の前後の希望が高かった。クリニカルリーズニングを実施しても1日だけでは3分の1の学生は有用と感じていなかった。
1期実習前後でCFSIにて訴えの多かった学生に面談を実施したが、中止及び不可のついた学生は6名であり、内容不良というコメントをもらった学生も数名存在した。