理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1141
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教育・管理系理学療法
訓練量とADL改善度についての検討
*河﨑 靖範松﨑 貴之山鹿 眞紀夫
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抄録
【目的】脳血管障害患者におけるPT・OT・ST(以下,POS)訓練量とADL改善度について検討した.
【対象】H17年1月~H18年6月(18ヶ月)の間に当院の回復期リハ病棟から自宅復帰した脳血管障害患者128名.年齢は,67±14歳.性別は,男性51%,女性49%.発症から当院入院までの期間は,20±19日.入院期間は,91±52日.入院時のBarthel Index(以下,BI)は,48±28点,退院時は89±14点であった.
【方法】訓練量の指標には請求した単位数を用いたが,H18年3月までは6単位の制限により,請求単位数以外に追加して訓練したものは20分を1単位として加えた.ADLの指標には入・退院時のBIを用いた.1.総POS訓練量,2.1日POS訓練量(総POS訓練量/入院期間),3.ADL改善度(退院時BI-入院時BI),4.1日ADL改善率(ADL改善度/入院期間),5.総PT訓練量,6.1日PT訓練量,7.移動・移乗・階段(以下,移動)改善度(退院時移動BI-入院時移動BI),8.1日移動改善率(移動改善度/入院期間),9.入院期間について相関係数を求め検討した.
【結果】総POS訓練量とADL改善度(p<0.01),1日POS訓練量とADL改善度(p<0.05),ADL改善度と入院期間(p<0.01),総PT訓練量と移動改善度,1日PT訓練量と移動改善度(p<0.05),1日PT訓練量と1日移動改善率(p<0.05),移動改善度と入院期間(p<0.01)に正の相関がみられた.
【考察】6単位の限られた単位数では,1日訓練量の増加によってADL改善度が高くなるというリハ効果を見出すことができなかったが,請求単位以外の訓練量を加えて検討した結果,合併症の有無に関係なく1日訓練量が多くなるほどADL改善度は高くなる傾向にあった.今後,訓練時間を増加することで短期間でのゴール達成も可能ではないかと考えられた.また入院期間が長く,総訓練量が多いほどADL改善度が高いことより,訓練効果を得るには,ある程度の期間においてリハを継続して実施することが必要ではないかと考えられた.PT訓練量と移動改善度においては,1日PT訓練量が多いほど,1日移動改善率も高い傾向にあり,1日PT訓練量の増加は,移動動作の早期獲得に非常に重要で,即時効果も期待できるのではないかと思われた.今後は手技や手法の統一による訓練の質の均一化が課題であり,時期に応じたPOSの訓練量の適切な配分や1日9単位で十分なリハが実施できるかについても検討する必要があると考える.今回は運動面を中心に検討したが,認知面を含めたADL評価の信頼性を高めることも今後必要だと思われた.今回社会的要素を除いた自宅復帰群のみを対象として検討しており,効果が期待できそうなケースには手をかける傾向にあることは否定できないが,訓練量の増加はADL改善の重要な因子であることが示唆された.
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© 2007 日本理学療法士協会
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