理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1155
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教育・管理系理学療法
理学療法教育におけるジグソー学習の効果
*我妻 浩二有馬 慶美郷 貴大吉村 匡史
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キーワード: ジグソー学習, PBL, 効果判定
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抄録

【目的】問題基盤型学習(以下,PBL)は小グループでの学習が前提となるが,グループ内では自主的な活動に欠ける学生も見受けられ,獲得される知識に差が生じている.この問題に対して,全員参加型のグループ学習を促す学習方略にジグソー学習が挙げられる.しかし,理学療法領域におけるジグソー学習の効果についての報告はなされていない.そこで本研究では,理学療法教育におけるジグソー学習の効果を検証することを目的とした.
【対象と方法】対象は研究の承諾を得た本校の1学年37名(平均年齢21.6±5.1歳)とした.ジグソー学習を行った群をジグソー群,通常のグループ学習を行った群を対照群とし,ジグソー群20名,対照群17名を無作為に割り付けた.
この実験のための学習課題は,しているADL,できるADL,するADL,どこででも行えるADLの概念を獲得するであった.実験方法は,まず両群間に知識の差がないことを確認するため事前テストを行い,その後再生テスト,転移テストを行った.対照群ではグループ内での学習を行うのに対し,ジグソー群ではグループ内で役割分担を行い,カウンターパート・グループを編成し学習を行った.学習時間は60分とし,その後再生テスト・転移テストを行った.尚,両群はそれぞれ別教室で行った.ジグソー学習効果の判定は, ADLに関する文章を提示し,それぞれのADLを文章中から指摘する形式を取り正答率の比較を行った.データの分析は有意水準を5%未満とし,両群間の正答率にt検定,同一群内の比較はTukey法を用いて検討を行った.
【結果】まず事前テストにおいて両群の既有知識に差は認められなかった.ついでジグソー学習の効果に関して,再生・転移テストそれぞれにおいて,両群間での有意差はみられなかった.
【考察】結果より,ジグソー群と対照群の間に有意な差は認められず,今回の実験におけるジグソー学習の効果は確認できなかった.今回の結果を考察すると,まずジグソー学習の効果に関する理学療法領域以外の報告では,約1ヶ月程度の学習期間を要するとの報告もあり,今回の実験が即時的効果を測定したためと思われる.また,知識を転移させる学習因子の一つとして,熟考する時間の長さが重要とされていることから,即時的な効果は期待できないとする先行研究と符合するものとなった.つまり今回の実験からは,理学療法教育においてもジグソー学習は即時的効果を有しないことが明らかとなった.しかしながら,ジグソー学習の効果全般を否定するものではなく,長期的効果については言及できない.今後の中長期的な観察が必要であると考えられた.
【まとめ】理学療法教育におけるジグソー学習法の即時的効果は認められなかった.今後,中長期的な効果の検証が必要である.

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© 2007 日本理学療法士協会
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