理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 11
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理学療法基礎系
高齢者の心拍応答性からみた低強度負荷レベルでの運動機能特性に関する研究
西田 裕介重森 健太水池 千尋根地嶋 誠
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抄録

【目的】高齢者の1日を反映する身体活動への介入は、介護予防、健康増進の視点からも重要である。また、高齢者は、日常生活活動(ADL)において低強度レベルでの動作形態を選択することが多いことや運動負荷強度の増加に伴う身体反応性が低下している者も多い。そのため、高齢者の低強度レベルにおける心拍応答性を把握する事は、身体活動へ介入していくためには重要である。そこで本研究では、高齢者を対象に運動負荷試験を行い、低強度レベルにおける心拍応答性を評価し、その他の全身持久力および筋力、身体活動量の評価と比較検討した。

【対象と方法】対象は、介護付き有料老人ホームに入所中の高齢者25名(平均年齢75.7±7.45歳)とした。対象者には、本研究に関する同意を文書及び口頭にて得た。また、本研究は、聖隷クリストファー大学倫理委員会の承認のもと実施した。方法は、低強度負荷レベルの心拍応答性の評価として、自転車エルゴメータを用いた運動負荷試験を実施した。運動負荷試験は、カルボーネンの処方心拍数より得られた30%レベルを目標心拍数とし、そのときの仕事量を測定した(30%負荷強度)。運動負荷試験のプロトコルは、30秒につき10wattずつ増加していくランプ負荷を採用した。また、持久力の評価には6分間最大歩行距離(6MD)を測定した。筋力の評価には、ハンドヘルドダイナモメータを用いて、右膝伸展筋力を測定した。身体活動量の評価には、エネルギー消費量を1日の行動記録より算出することが可能である肢位強度法身体活動量推定法(PIPA)を用いて評価した。データは、それぞれの評価項目の関連性をピアソンの積率相関分析により検討した。また、有意水準は5%未満とした。

【結果】各測定項目の結果を示す。30%負荷強度は、29.4±15.1wattであった。6MDは、399.2±137.1mであり、右膝伸展筋力は、190.7±98.7Nmであった。PIPAは、1948.1±631.4kcalであった。相関分析の結果、30%負荷強度と相関が認められた項目は、右膝伸展筋力(r=0.38、p=0.03)のみであり、その他の指標とは関係性を見出せなかった。また、6MDと右膝伸展筋力(r=0.57、p=0.03)、身体活動量(r=0.57、p=0.01)との間にはそれぞれ有意な相関が認められたが、筋力と身体活動量の間には相関関係は認められなかった。

【まとめ】低強度レベルでの運動機能は、日常生活活動で用いられる多くの動作を反映する。本研究の結果より、心拍応答性からみた低強度レベルでの運動機能は、全身持久力よりも筋力に依存した運動であると考えられる。しかし、1日のADLの行動特性から求めた身体活動量は全身持久力と関係していることから、低強度レベルでの運動能力の向上には、筋力だけではなく、全身持久力を含めた包括的な運動処方が重要であると考えられる。

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© 2008 日本理学療法士協会
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