理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 15
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理学療法基礎系
等尺性膝伸展運動における強度の違いが局所脳血流に及ぼす影響
森田 伸日下 隆山田 英司田仲 勝一内田 茂博伊藤 康弘藤岡 修司板東 正記有馬 信男山本 哲司
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抄録
【目的】筋力発揮の程度は大脳からの興奮水準など中枢神経系の要因が関係しており,手指の等尺性運動にて筋出力と局所脳血流量の増加に相関があると報告されているが,下肢に関する報告は少ない.今回,等尺性膝伸展運動の強度の違いにおける脳組織酸素化状態の変化を検討するため機能的近赤外分光法(fNIRS)にて測定し,大腿四頭筋の活動と脳組織酸素化状態の変化についても比較,検討したので報告する.
【方法】対象は骨関節疾患を有しない健常成人12名(男性8名,女性4名,平均年齢24.2±3.4歳)とした.全対象者において事前に本実験の説明を口頭にて行い,同意を得た.等尺性膝伸展運動は,全対象者とも右側に対しCYBEX NORMTMを用いて坐位(膝関節屈曲60°)で行い,事前に最大随意筋力を測定した.運動条件は膝関節屈曲60°での安静(安静),最大随意筋力の30%(30%MVC),最大随意筋力(MVC)を設定した.脳組織酸素化状態の測定は近赤外光イメージング装置(OMM-3000,島津製作所)を用いて,プローベを国際10-20法に基づき配置し計測した.各運動条件にて安静15秒‐運動5秒‐安静15秒の課題を5セット連続で行い,酸素化ヘモグロビン(oxyHb)の変化を記録,5セットのデータを加算した.両側運動野下肢領域に最も近いと想定される左右5個のチャンネルで,運動5秒間におけるoxyHb(最大値)の平均値から運動条件の違いによるoxyHbの変化を対応のあるt検定を用いて検定した (有意水準5%以下).大腿四頭筋の筋活動は,MyoSystem1200s(Noraxon社製)を用いて課題5セットの右外側広筋の表面筋電図を測定し,安静,30%MVC,MVCの運動5秒間における積分値(μV)の平均値を算出した.各運動条件における筋活動にについて t検定を用いて検定した(有意水準5%以下).
【結果および考察】等尺性膝伸展運動におけるoxyHbの変化は,安静と比べMVCで両側運動野下肢領域付近に有意な局所の増加を認め, 30%MVCでは安静と比べ左運動野下肢領域付近で局所の増加を認めた.また,30%MVCと比べMVCは両側運動野下肢領域付近に有意なoxyHb増加を認めた.右外側広筋の積分値は運動強度が大きくなるほど有意な増加を認めており,今回,30%MVCよりMVCでoxyHb増加領域が認められたことにより,等尺性膝伸展運動において運動強度が大きいほど大脳運動野の活動が大きいことが示唆された.



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© 2008 日本理学療法士協会
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