理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 16
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理学療法基礎系
姿勢の違いにおける下肢動的運動時の総頚動脈血流量変化
LBNP(lower body negative pressure)負荷装置を用いて
星合 敬介幸田 剣中村 健木下 利喜生山本 義男橋崎 孝賢児嶋 大介川西 誠遠藤 城太郎宮本 敬二松浦 誠憲新谷 啓子荒川 英樹江西 一成田島 文博
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抄録

【はじめに】臨床では運動負荷の手段として動的運動を用いる事が多く、動的運動時の循環動態に関する報告は多い。しかし、動的運動時の総頚動脈血流量の動向は不明な点が多く、姿勢による影響についても分かっていない。そこで、我々は下肢動的運動時における姿勢の違いが総頚動脈血流量に与える影響を検討する目的で、起立時と同様に静脈還流量低下をもたらす、下半身陰圧(lower body negative pressure:以下LBNP)負荷装置を用いてLBNP負荷時と臥位姿勢で総頚動脈血流量の変化を検討した。
【方法】対象は健常若年男性8名。LBNP負荷0mmHgを臥位群、LBNP負荷-40mmHgを陰圧負荷群とした。運動負荷はエルゴメーターを使用し、60%HRmax負荷で下肢動的運動を行った。プロトコールは安静3分、運動10分とした。測定は頚動脈エコーにて総頚動脈血流量、心拍出量計にて心拍出量、心拍数、1回心拍出量を測定。また手動血圧計にて血圧を測定し、平均血圧を算出した。測定データは、1分毎に安静時と比較、また両群間での比較を行った。
【結果】総頚動脈血流量は安静時と比較して、臥位群で運動5,8-10分目に有意な上昇、陰圧負荷群では運動6-10分目に有意な上昇を認めた。両群間の比較では有意差はなかった。心拍出量は安静時と比較して、両群とも運動時に有意な上昇を認めた。両群間の比較では、安静時,運動1分目に臥位群の方が有意に高値を示した。心拍数は安静時と比較して、両群とも運動時に有意な上昇を認めた。両群間の比較では、安静時,運動6分目に陰圧負荷群の方が有意に高値を示した。1回心拍出量は安静時と比較して、臥位群で運動時に有意な低下、陰圧負荷群で有意な上昇を認めた。両群間の比較では、安静時,運動1分目に臥位群の方が有意に高値を示した。平均血圧は安静時と比較して、臥位群で運動3分目に有意な上昇を認めた。両群間の比較では、運動3分目に臥位群で有意に高値を示した。
【考察】本研究の結果、両群において下肢動的運動における総頚動脈血流量は姿勢の変化を認めなかった。しかし、両群とも運動時において心拍出量の有意な上昇とともに、総頚動脈血流量は上昇することが判明した。また、両群間の比較において心拍出量は安静時に有意差を認めたが、総頚動脈血流量は有意差を認めなかった。つまり、総頚動脈血流量は姿勢が変化しても一定に保たれる可能性があるが、運動負荷に伴う心拍出量の上昇に影響を受けることが示唆された。以上より、総頚動脈血流量は姿勢負荷で一定に維持され、運動負荷で上昇する機序には、心臓から血液が駆出された後に調節を受けている可能性が考えられた。本研究の対象者は循環血液量をはじめとした循環調節系が保たれている健常人であり、実際には高齢者や起立不耐性を有する症例を対象とするため、姿勢・運動負荷によって総頚動脈血流量が変化する可能性を念頭において理学療法を実施する必要がある。

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© 2008 日本理学療法士協会
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