理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 27
会議情報

理学療法基礎系
ブリッジ動作時の下肢の力学的負担計測
膝関節屈曲角度の影響
津川 理香佐藤 秀一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】
ブリッジ動作は理学療法でしばしば行われるが,下肢関節角度の設定は曖昧であり、通常任意の肢位で行われている.本研究では,膝関節屈曲角度を変えたブリッジ動作が下肢の筋群に与える影響について生体力学の観点から検討し,最適な膝関節角度を選択することに資するデータを取得することを目的とした.
【方法】
本研究に賛同する、下肢および腰部に既往歴のない健常青年16名(平均年齢21.8±0.8歳,平均身長164.3±5.7cm,平均体重56.4±5.9kg)を計測対象とした.動作中の身体の空間座標の計測には,標点位置計測装置VICON512(VICON MOTION SYSTEMS社製:赤外線カメラ7台)と歪みゲージ式床反力計(AMTI社製:2枚)を,サンプリング周波数120Hzで同期,同調させた三次元動作解析システムを用いた.臨床歩行分析研究会が推奨するマーカーの貼付方法を用いて,直径25mmの赤外線反射マーカーを被験者の左右両側の肩峰部,股関節部,膝関節部,足関節部,第五中足骨部の合計10箇所に貼付し,左右の足底を各々の床反力計上に置いた.評価指標には,股・膝・足関節角度,股・膝・足関節モーメントを用いた.計測する肢位は,動作開始時の膝関節屈曲角度が50°,60°,70°の3条件とした.被験者には,計測者の合図で殿部挙上を開始してもらい,殿部最高到達点に達したところで3秒間姿勢保持させた.ブリッジ動作時の股関節,膝関節,および足関節モーメントの比較には運動開始時の膝関節屈曲角度を一要因とした対応のない一元配置分散分析を用い,その後,多重比較検定によりそれぞれの群間比較を行った.
【結果】
肢位保持期の股関節伸展モーメントと足関節底屈モーメントは,3条件とも同様のパターンを示し,第1相から第3相にかけての平均値に有意差は認められなかった.さらに,姿勢保持期の膝関節屈曲モーメントは,条件1と条件2,条件2と条件3の2条件において有意差は認められなかったが,条件1は条件3に比べ有意に高かった(p<0.01).すなわち,ブリッジ動作において、開始時の膝屈曲角度が70゜は50゜に比べ,ブリッジ動作保持時における膝屈曲モーメントが有意に高かった。
【考察】
股関節に着目すると,ブリッジ動作保持において膝関節の屈曲角度による関節モーメントの値に違いはほとんどみられなかったことから,股関節の伸展モーメントは膝関節の角度の変化による影響は少ないと考えられた.したがって,膝に負担をかけないように股関節にアプローチするならば,条件1の肢位で行うことがよいと考えられた.足関節底屈モーメントにおいては,股関節と同様に膝関節屈曲角度による違いはほとんど認められなかった.このことは、足関節は膝関節より関節変化が少なく,肢位固定の役割を持つことから,膝関節の開始肢位によって足関節への負担は影響を受けないと考えられた.

著者関連情報
© 2008 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top