理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 28
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理学療法基礎系
段差をまたぐ動作における下肢の関節運動について(第2報)
垂直線を外部基準に用いて
徳田 有美斎川 大介伊藤 麻美
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抄録

【目的】身体運動は複雑であるが、肩甲上腕リズムや骨盤大腿リズムに代表されるような特定の運動パターンがあることで運動の自由度が調節され、合理的な動きが可能になっているとされている。我々はまたぎ動作を観察していて、下肢の各関節の動きは一見個別のようだが一定の運動パターン(リズム)が存在するのではないかと考えた。またぎ動作の先行研究には母趾床間距離に着目した報告などはあっても関節運動の関係を述べたものはないため、本研究の第一報でその存在を明らかにしようと試みた。その結果、垂直線を外部基準とした場合、膝関節と足関節には一定の関係がある可能性が示唆された。そこで、本研究ではまたぎ動作における下肢関節運動の関係をより明確にすることを目的とした。

【方法】対象は健常成人10名(男性5名,女性5名,平均年齢26±3.3歳)。実験条件はあらかじめ設定した段差の約4m手前の位置から歩行を開始し、自然な歩行速度で歩きながら右下肢から段差をまたぐこととした。段差には4種類の角材(高さ:1.5cm・3.0cm・4.5cm・6.0cm、横幅:60cm、奥ゆき:1.0cm)を用い、提示順序はランダムとした。条件毎に数回の試行後、段差を越える際の右下肢の各関節角度を離床から着地までサンプリング周波数60Hzにて計測した。各関節の角度変化については、一般的なROMを基準としたものと、垂直線を基準とした角度変化(外的角度)の2種類を算出した。撮影にはSony製Handycam HDR-SR1を用い、画像をパーソナルコンピュータに取り込んだ後、米国国立衛生研究所(NIH)開発の画像処理プログラムImageJを用いて処理した。

【結果】外的角度をみた場合、いずれの被検者の結果でも時系列において膝関節と足関節はほぼ平行な角度変化を示した。特に遊脚の中期では両関節ともに直線的な変化を示した。角材の高さ毎の散布図における回帰直線の傾きは平均1.09±0.06であった。一方、一般的なROMの結果からは膝・足関節の関係性を同じように見出すことはできなかった。なお、段差を6.0cmまであげても前回の結果と同様に膝・足関節では角材の高さの違いによる角度変化は少なく、股関節では高さに比例して屈曲角度が増える傾向が認められた。

【考察】健常人のまたぎ動作では、膝関節と足関節の外的角度はおよそ1:1.1の割合で変化していると考えられる。特に遊脚中期の変化は直線性が強く、またぎ動作の膝・足関節の動きには一定のリズムが存在することが示唆された。このリズムは少なくとも6.0cmまでは段の高さに依存せず、またぎ動作の運動の自由度を減らしていると推測される。段の高さに対しては先行研究にも認められるように股関節の角度を変化させることで対応していると考えられる。

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© 2008 日本理学療法士協会
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