理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 41
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理学療法基礎系
排泄姿勢と直腸肛門機能に関する研究
排泄時の仙腸関節の動きと姿勢との関係
槌野 正裕荒川 広宣山下 佳代中島 みどり前崎 孝之坊田 友子甲斐 由美高野 正太高野 正博
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抄録

【はじめに】排泄は日常生活を遂行する上で欠かすことのできない行為である.排泄に対してリハビリテーション領域では,排泄を行なうための一連の動作としてのアプローチがほとんどであり,排泄そのものに目を向けたアプローチの研究は皆無に等しい.今回,我々は排泄困難例に対して排便時の姿勢評価と指導を行い,知見を得たので報告する.
【対象】2007年8月より10月までに,排便訓練を施行している排便困難例において,便意は感じるが排便時間がかかる等の直腸性便秘で,外肛門括約筋の奇異収縮例は除外した10例とした.直腸肛門機能検査において,直腸と肛門の排便時怒責圧を測定し,理学療法士が便座に着座した際の排便姿勢の評価と指導を行なった.なお今回の症例は10例とも自宅では洋式トイレを使用されていた.
【結果】排泄訓練におけるバルーン排出困難例では,腹圧を上昇できないために直腸圧が高まっておらず,姿勢評価を行なったところ,体幹は伸展方向に上を向き開口し,骨盤を前傾させた姿勢であった.1例では排便姿勢指導により直腸圧は162.5から206.3へ高まり,肛門圧は368.8から143.8(cmH2O)へ低下し,バルーンの排出も不可能から20(ml)へ改善した.他の例においても同様に直腸圧が高まり,肛門圧は低下した.
【考察】排便困難例にとっては,排泄しようとすればするほど無意識に体幹伸展位となりやすく,腹圧上昇を妨げていたと考えられる.排便時のダイナミックCT画像より,restからsqueezeへ移行する際には腰椎は前彎増強し,骨盤は前傾位となる.この時,仙骨や尾骨の運動は認めない.次にrestからstrainにかけては腰椎の動きはほとんど認めず,骨盤が後傾位となり仙骨は起き上がる.仙骨の起き上がりに伴い尾骨は受動的に伸展する.以上より,squeezeでは骨盤を前傾位とすることで腹圧上昇と肛門圧上昇し,strainにて骨盤を後傾位とすることで,仙骨の起き上がり運動と尾骨の伸展運動が受動的に起こっていることで,骨盤底筋群の筋緊張が低下し肛門内圧が下がり排便が行われていると考えられる.よって今回の排便困難例においては,strainの際に通常と反対の姿勢パターンとなっていることが考えられる.
【まとめ】排便画像より排便時に骨盤帯と仙骨の関節運動が行われていることを確認し,排便困難例に対して理学療法士としてのアプローチが出来ると考えた.今回,排便困難例に対して姿勢評価と指導により,直腸圧や肛門圧に変化をもたらした.排便困難例では通常とは反対の姿勢パターンとなっていることが示された.このように我々理学療法士はトイレ動作としての一連の動作のみではなく,排便姿勢評価により排便障害に対してのアプローチも出来ることが示された.今後,更に骨盤周囲の機能に関しての研究を行っていきたい.

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© 2008 日本理学療法士協会
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