理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 456
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理学療法基礎系
端座位姿勢保持時の筋活動について
表面筋電図を用いての解析
村上 康朗
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抄録

【目的】
端座位姿勢は理学療法中に多くみられる姿勢であり、また我々理学療法士がその姿勢について評価・指導することも多い。評価や指導においてはアライメントを観察することが多いが、実際理学療法プログラム中など長時間の座位となる場合、同一アライメントにおいても筋活動には変化があるのではないかと疑問を持った。しかし静的座位保持における筋活動を検討した先行研究は少ない。そこで本研究では同一アライメントにおける端座位姿勢保持においての筋活動の変化を検討することを目的とした。
【方法】
対象は健常人男性7名である。被験者には安楽座位を30秒間、骨盤中間位体幹正中位での端座位姿勢(以下中間位座位とする)を5分間保持させ、表面筋電図(Noraxon社製myoresearch)を用いて両側の内腹斜筋、腰部脊柱起立筋、大腿二頭筋、大腿直筋の筋活動を記録した。安楽座位は被験者が力を抜いて行う端座位とした。中間位座位では両側上肢は手部を膝関節の上に位置し、骨盤・体幹正中位、膝関節90°屈曲位、足底は床に接地し、同一アライメントの保持を意識させた。実験中の姿勢は矢状面より観察した。得られた筋電図波形は全波整流し、30秒間隔での筋積分値を求めた。安楽座位で得られた積分値を基準とし、端座位での10期の筋積分相対値を算出し、安楽座位に対して中間位座位における筋活動の変化の検討を行った。
【結果】
最も活動量が高くなる筋は腰部脊柱起立筋(以下背筋群)と内腹斜筋(腹筋群)に分かれ、その人数は背筋群2人、腹筋群5人であった。背筋群においては両側の腰部脊柱起立筋が高い活動を示し、内腹斜筋は低い活動を示した。腹筋群では、一側の内腹斜筋活動が高く両側の腰部脊柱起立筋にも活動が認められる傾向であった。下肢筋群の活動は被験者間で差があったが、安楽座位と比べて著明な増加はなかった。また、全ての筋活動において左右差は認められたが、特に内腹斜筋に差の大きい傾向が見られた。
【考察】
姿勢保持において、腰部脊柱起立筋は腰椎前弯を生じさせ、腹筋群は腹腔内圧を上げることにより横隔膜を下方から押し上げ、姿勢保持に影響する、とある。今回の実験では内腹斜筋を活動させて姿勢保持を行う被験者が多い結果であった。腹筋群では両側の腰部脊柱起立筋にも活動を認めたことから、中間位座位姿勢保持において、内腹斜筋が腹腔内圧の上昇、腰部脊柱起立筋が生理的腰椎前弯保持に関与して姿勢保持を行っていることが考えられる。一方背筋群においては内腹斜筋の活動は低い状況であったことから腰部脊柱起立筋に依存して姿勢保持を行っていることが考えられる。腰痛を有する患者や背部の筋緊張が高い患者においては腹筋群の収縮を意識させた座位姿勢を指導する必要があると考えられた。また、内腹斜筋には左右差が大きく出現したという結果から、細部にわたる姿勢の左右差も評価する必要性を再認識した。

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© 2008 日本理学療法士協会
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