理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 478
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理学療法基礎系
筋性拘縮に対する持続的伸張運動の効果検証
関節可動域と不溶性コラーゲン含有量の変化から
近藤 康隆横山 真吾片岡 英樹坂本 淳哉西川 正悟坂井 孝行中野 治郎沖田 実吉田 佳弘
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抄録

【目的】先行研究によれば,筋性拘縮の病態の一つに筋内膜を構成するコラーゲン線維の配列変化が指摘されており,持続的伸張運動はこの配列変化の改善を促すと報告されている.一方,コラーゲンの生化学的検索結果として,不動によって骨格筋内に含有する不溶性コラーゲンが増加する,すなわち,分子間架橋結合が形成されたコラーゲンが増加するとした報告もなされており,この変化も筋性拘縮の病態の一つといわれている.しかし,この病態に対する持続的伸張運動の影響について検討した報告はこれまで少ない.そこで,本研究では関節可動域と骨格筋内の不溶性コラーゲン含有量の変化から筋性拘縮に対する持続的伸張運動の効果を検証した.

【方法】Wistar系雄性ラット19匹を無処置の対照群5匹と両側足関節を最大底屈位でギプスで不動化する実験群14匹に分け,実験群はさらに1)不動のみの群5匹(不動群),2)不動終了後2週間,通常飼育とする群5匹(自然回復群),3)不動終了後2週間,ヒラメ筋に持続的伸張運動を実施する群4匹(伸張群)に分けた.検索はまず,各群すべて不動期間終了直後に麻酔下で0.3Nの張力で足関節を背屈させた際の可動域(以下,背屈ROM)を測定し,自然回復群と伸張群は不動終了後2週目にも同様の方法で背屈ROMを測定した.また,伸張群に対する持続的伸張運動は,麻酔下で背屈ROM測定の際の3倍の張力(0.9N)で足関節を背屈し,これを非伸縮性テープで30分間保持することで実施した.次に,各群の実験終了後はヒラメ筋を検索材料に中性塩,酸,ペプシンによっても可溶化されない不溶性コラーゲンを抽出し,コラーゲン固有のアミノ酸であるヒドロキシプロリンを定量した.なお,本実験は,長崎大学動物実験指針に準じて行った.

【結果】不動終了直後の背屈ROMは3群の実験群すべて対照群より半減し,群間にも差を認めなかった.また,不動終了後2週目は自然回復群,伸張群ともに背屈ROMを認めたが,これは伸張群で著しかった.次に,不溶性コラーゲン含有量は不動群が最も高値で,次いで自然回復群,伸張群,対照群の順に低値であった.

【考察】背屈ROMの結果より,実験群の3群は不動によって同程度の拘縮が発生し,その後の改善は自然回復群に比べ伸張群が良好であった.また,不溶性コラーゲン含有量の結果から,不動によって分子間架橋が形成されたコラーゲンが増加し,不動終了後はこれが減少し,特に,伸張群において顕著であったと推測できる.つまり,分子間架橋結合が形成されたコラーゲンが増加しているといった筋性拘縮の病態に対して持続的伸張運動はその改善を促す可能性があり,このことは背屈ROMの改善が良好であった結果にも関連していると思われる.そして,先行研究の結果を併せて考えると,持続的伸張運動は筋性拘縮の改善を促す有効な手段であると考えられる.

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© 2008 日本理学療法士協会
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