理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 655
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理学療法基礎系
ラット膝関節屈曲拘縮における大腿部筋間脂肪織の病理組織学的変化
荒木 督隆細 正博松崎 太郎小島 聖渡邊 晶規吉田 信也上條 明生
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キーワード: 拘縮, 筋間脂肪, 線維化
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抄録

【目的】
関節拘縮は、理学療法士にとってその予防も含めてきわめて治療頻度の高い機能障害の1つである。長期固定/安静臥床による拘縮は、関節性、筋性、軟部組織性等の各責任部位が混合して発生していると考えられるが、そのうちどの要素が責任部位としてより重要かについては不明な点が多い。
【方法】
9週齢のWistar系雄ラット16匹を使用した。うち拘縮群を12匹、正常群を4匹とした。アルミニウム製金網とギプス包帯を使用して左膝関節最大屈曲位にて不動化を行った。固定期間は2週間とした。実験期間中、ラットはケージ内を自由に移動でき、水、餌ともに自由に摂取可能であった。実験期間終了後、ジエチルエーテル、ネンブタールによる深麻酔下、大腿正中断面を採取しヘマトキシリン・エオジン染色を行い、光学顕微鏡下にて観察した。本実験は金沢大学動物実験委員会において承認されたものである。
【結果】
予備的観察にてラットの大腿部皮下脂肪織が一般に薄く、脂肪織の変化の観察部位としては不適当と判断し、比較的安定的に脂肪織が観察された大内転筋と大腿二頭筋の間、坐骨神経に隣接した部位の筋間脂肪織を観察部位とした。コントロール群では最大で10脂肪細胞相当の厚さの脂肪織が観察されたが、拘縮群では12例中9例で著名な脂肪細胞の萎縮・減少が観察され、代わって幼弱なコラーゲンと推測される好塩基性の細線維状ないし無構造物に置換されていた。炎症細胞浸潤は見られなかった。
【考察】
関節構成体および筋以外の軟部組織としては、皮膚(表皮、真皮)、脂肪織、血管、神経などが上げられるが、拘縮時の各部位の関与の程度は不明であり、かつ、実際に理学療法士による軟部組織モビライゼーションや神経モビライゼーションとして、これらの部位に対する治療が試みられているが、その有効性についての検討もなされていない。今回、ラット膝関節屈曲拘縮モデルを用いて筋間脂肪織を観察したところ、著名な脂肪織の萎縮・減少と線維化を示唆する所見を観察した。このような脂肪織の変化はやはり同様の実験モデルを用いた先行研究において膝関節脂肪体に発生することが指摘されているが、その変化は脂肪体より速く、この線維化が拘縮の一端を担う可能性が示唆された。

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© 2008 日本理学療法士協会
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