理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 662
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理学療法基礎系
易転倒高齢者の障害物跨ぎ動作時の運動制御とボディ・イメージについて
中村 眞須美森園 亮大屋 友紀子元永 公之堀川 悦夫
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抄録
【目的】地域在住高齢者の障害物跨ぎ動作時の運動制御機能と自己のボディ・イメージが易転倒性とどのように関係しているか検討すること。

【方法】被検者は、地域在住の健常高齢者である男性5名と女性19名の計24名(平均年齢:74.5±5.2歳)とした。被検者に対して、質問紙と聞き取りにより過去1年間の転倒歴、余暇活動の有無とその活動量、外出頻度を調査した。ボディ・イメージに関しては、最大一歩幅の予測値と実測値を計測し、その差を算出して評価した。障害物跨ぎ動作時の実験においては、3次元動作解析システムVICONを用いて、障害物に対する視野制限がない通常跨ぎ動作(Condition1:C1)と、障害物に対して視野を制限した制限付き跨ぎ動作(Condition2:C2)をランダムに施行した。そして、障害物を跨ぐ際のFoot clearance、Toe and heel distance、股・膝・足関節角度や体幹の揺れを解析した。さらに、運動機能の評価として、地域保健活動にて頻繁に行われている握力、膝伸展筋力、Timed up and Go test、Functional reach test、反応時間の測定を行った。注意・判断能力の評価としては、Trail making A-test、ならびにB-testを行った。統計処理にはSPSSver.12.0を用いてindependent t-testを行った。また、有意水準は5%未満とした。

【結果】転倒経験者は5名で平均年齢は75.2±6.2歳であり、非転倒経験者は19名で平均年齢は74.3±5.0歳であった。最大一歩幅の差(予測値-実測値)では、転倒経験者は-5.7±5.1cmで、非転倒経験者は7.6±8.0cmであり、転倒・非転倒経験者間に有意な差が認められた(p=0.004)。また、障害物跨ぎ実験のFoot clearanceにおける C1とC2との差(C2-C1)は、転倒経験者が非転倒経験者と比べて有意に小さかった(p=0.016)。一方、年齢や余暇活動量、運動機能や注意・判断能力においては、転倒経験者と非転倒経験者との間に有意な差は認められなかった。

【考察】自己の運動機能を過大評価、つまりボディ・イメージを正しく認識できない高齢者や歩行時視覚情報によるフィードバック機能に影響を受けやすい高齢者は、転倒リスクが増大することが示唆された。地域在住の健康な高齢者は、運動機能や注意・判断能力に差がなく、地域保健事業で一般的に行われているTUGやFRなどの評価では易転倒性の有無を識別することは難しいため、ボディ・イメージや歩行動作時の運動制御機能の詳細な評価を行なっていく必要があると思われた。

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© 2008 日本理学療法士協会
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