理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 859
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理学療法基礎系
筋力増強運動が筋力,身体組成,及び筋組織厚に及ぼす効果
藤野 英己村田 伸甲斐 義浩竹井 和人村田 潤村上 慎一郎大田尾 浩武田 功
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キーワード: 筋肥大, 体脂肪, 超音波断層
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抄録

【目的】筋力増強運動は,理学療法における主要な治療法として利用され,その効果について広く知られている.筋力増強運動による筋力を経時的に観察した研究から,筋力増強運動を開始した直後の筋力増加は,神経系の促通によるもので,筋肥大は伴わないと考えられている.一方,筋肥大等の形態変化が観察されるのは,長期間の筋力増強運動を必要とする.そこで,本研究では,筋力増強運動に伴う身体組成や筋組織の形態変化を検証するために,6週間の筋力増強運動を行い,その効果を検討した.
【方法】健常成人男性15名(平均年齢 21.1 ± 0.6歳)を対象とし,6週間の筋力増強運動を行った.尚,被験者には,研究内容を説明し,同意を得た上で研究に着手した.筋力増強運動は,ハーフスクワット運動とし,最初の2週間は,30回 × 3セット,3週目以降は50回 × 3セット,運動頻度は週4回とした.本研究では,運動前,運動3週間後,6週間後の身体組成,膝伸筋力,及び超音波による筋組織厚の計測を行った.身体組成は生体電気インピーダンス法により,体脂肪率,体脂肪,筋肉量を算出し,大腿中央部と膝蓋骨上方10 cm部の周径を測定した.筋力は,膝伸筋の最大等尺性収縮筋力をハンドヘルドダイナモメーター(Power Track II,Jtech Medical)で測定した.筋組織厚は,超音波測定装置(EU-2002B,伊藤超短波)で大腿遠位部筋(内側広筋),大腿中央前面部筋(大腿直筋,中間広筋)の断層撮影を行い,Image J 1.31vで筋組織厚を計測した.各測定値は反復計測ANOVA検定を行い,Post-hoc (Scheff検定)で,運動効果の判定(p < 0.01)を行った.
【結果】筋力増強運動の結果,膝伸筋力は運動後3週間では有意な増加が観察されなかったが,運動開始6週後に8%の有意な増加がみられた.一方,身体組成や周径の変化は観察されなかったが,超音波断層測定による筋組織厚は,運動後6週間で,大腿直筋 5.6 mm,中間広筋 4.0 mm の有意な増加が観察された.また,内側広筋の筋組織厚は増加傾向にあったが,有意な増加は観察されなかった.
【まとめ】健常成人男性に対する筋力増強運動は,3週間では効果が観察されなかったが,6週間では,筋力及び筋組織厚,共に有意な増加を示した.一方,体脂肪率や体脂肪量等の身体組成,大腿周径は変化を示さなかった.こられの結果から,筋力増強運動は,脂肪量を変化させなく,筋力増加,筋肥大を惹起し,有意な効果が得られるのは,少なくとも6週間の運動の継続が必要であることが示唆された.

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© 2008 日本理学療法士協会
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