理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1097
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理学療法基礎系
昇段動作における下肢の関節運動について
垂直線を外部基準として
伊藤 麻美斎川 大介徳田 有美
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キーワード: 昇段, 運動制御, 動作分析
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抄録
【目的】昇段時のクリアランスについては母趾踏面間距離の測定や、段が高くなるにつれて足関節の背屈角度が大きくなるという報告はされている。しかし、股・膝・足関節の関連性を見たものは報告されていない。徳田らは、またぎ動作において、垂直線を基準とした角度変化では膝関節と足関節には一定した関係があると述べている。そこで、本研究では昇段時に下肢の各関節がどのように組み合わされているのかを明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は健常成人10名(男性5名 女性5名 平均年齢26±3.3)。実験条件は踏み面25cm、高さ10 cm・15 cm・20 cmの3種類の段を右足より一足一段にて昇段してもらった。提示順序はランダムとした。条件毎に数回の試行後、昇段時の右下肢の各関節角度を右足尖離地から右下肢着地までをサンプリング周波数60Hzにて計測した。各関節の角度変化については、一般的なROMを基準としたものと、垂直軸を基準とした角度変化(外的角度)の2種類を算出した。撮影にはSony製HandycamHDR‐SR1を用い、画像をパーソナルコンピューターに取り込んだ後、米国国立衛生研究所(NIH)開発の画像処理プログラムImageJを用いて処理した。
【結果】一般的なROMでは股関節屈曲のピークは右下肢の最終段着地前、膝関節屈曲のピークは右足尖が最終段の高さに達した時、足関節底屈のピークは右足尖離地後、背屈のピークは右第5中足骨底が最終段上に達した時となった。角度変化の関係は課題前半に股関節と膝関節は一定の関係を示した。膝関節と足関節の関係は認められなかった。外的角度変化では、股関節屈曲のピークは右下肢の最終段着地前、膝関節屈曲のピークは右膝軸が最終段の直上に来た時、足関節底屈のピークは右足尖が一段目の高さに達した時、背屈のピークは股関節屈曲のピーク後の最終段着地前となった。角度変化の関係は課題前半に股関節と膝関節は直線的な変化を示し、傾きもほぼ平行であった。その後、膝関節屈曲のピークを境に膝関節と足関節は直線的な変化を示し、傾きもほぼ平行であった。これらは全体的な傾向として認められ、段の高さ・被検者による差は認められなかった。
【考察】昇段動作は下肢が個々に動く運動の自由度が大きい運動のように見えるが、今回の外的角度変化の結果より、課題前半は股-膝関節の一定した関係が見られ、課題後半は膝-足関節の一定した関係が見られた。このことから、別々の動きのように見えていた下肢の動きも運動の自由度を減少させるために、股-膝関節・膝-足関節という一定の関係を持って対応してきていると示唆された。また、またぎ動作と異なるのは、運動課題の前半と後半で一定した関節の組み合わせを変化させてくることであり、昇段動作はまたぎ動作よりも制御の難しい動作であると示唆された。
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© 2008 日本理学療法士協会
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