理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1311
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理学療法基礎系
背もたれ椅子座位において体幹筋同時収縮が脊柱彎曲に及ぼす影響
渡邉 進江口 淳子小原 謙一石田 弘
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抄録
【目的】背もたれ椅子座位で座業をしたり、テレビ鑑賞をしたりする時には、胸・腰椎は後彎することが多い。この時の過度の脊柱後彎という不良姿勢は習慣化しやすく、長期間にわたる脊柱への繰り返し負荷は脊柱変形や腰痛症の原因ともなる。一方、近年生体力学研究から腹部と腰部筋の同時収縮によって脊柱の安定性が増し、良姿勢がもたらされることが分かってきた。しかしながら、その同時収縮が背もたれ椅子座位における脊柱彎曲に及ぼす影響については明らかにされていない。本研究の目的は、それを筋電図学および運動学的に解析することである。
【対象と方法】対象は健康な男性10名(平均年齢20.8±0.8歳)であった。全員に実験について十分な説明を行い、同意を得た。表面電極を3cmの間隔で右側の腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腰部脊柱起立筋(L3)、多裂筋(L5)に貼付した。筋電図の測定と解析にはNORAXON社製筋電計を用いた。始めに最大随意収縮(MVC)を行わせ正規化のための基準とした。次に対象者に垂直より10度後傾の背もたれ椅子で座位をとらせた。まず不良姿勢として体幹筋の脱力を、後に良姿勢として体幹筋の軽い同時収縮を意識させ、それぞれ筋活動を5秒間記録した。体幹筋の同時収縮の指示は「普通に呼吸しながら、パンツのゴムからお腹を少し引っ込めてください」とした。得られた平均活動電位をMVCで正規化した(%MVC)。同時にインデックス社製脊柱計測分析器を用いて脊柱彎曲角を計測した。指標は胸椎彎曲角(TK)、腰椎彎曲角(LL)、仙骨傾斜角(SIA)とした。不良姿勢と良姿勢で、%MVC、TK、LL、SIAを対応のあるt検定で比較した(p<0.05)。
【結果】( )内の前に不良姿勢、後に良姿勢の数値を示す。%MVCについては、腹直筋(4.8±3.9%、5.6±3.8%)、外腹斜筋(3.9±3.4%、7.9±6.4%)、内腹斜筋(7.5±5.2%、22.8±16.7%)、腰部脊柱起立筋(5.4±2.4%、6.6±2.7%)、多裂筋(4.4±2.9%、8.6±5.3%)であった。外腹斜筋、内腹斜筋、多裂筋で、良姿勢は不良姿勢より有意に高い筋活動を示した。脊柱の彎曲については、TK(37±7度、33±7度)、LL(21±8度、0±14度)、SIA(-28±4度、-18±4度)であった。TKを除いて、良姿勢は不良姿勢よりLLとSIA(絶対値)が有意に減少した。つまり腰椎後彎と仙骨後傾が減少した。
【考察】背もたれ椅子座位で、体幹筋を同時収縮させた結果、有意に腹斜筋群と多裂筋の活動が高まり、有意に腰椎の後彎角は減少し、仙骨角度はより直立に近づいたものと思われる。体幹筋、特に深部筋である腹横筋および内腹斜筋と多裂筋の同時収縮は良姿勢をもたらし、脊柱を安定化するといわれる。今回の結果より、背もたれ椅子座位で体幹筋を軽く同時収縮させることは脊柱の安定化に寄与することが示唆された。









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© 2008 日本理学療法士協会
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