理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1319
会議情報

理学療法基礎系
仙骨座りと坐骨座りにおける多裂筋の筋厚変化
畠中 彩圭渡邊 昌宏今村 安秀(MD)
著者情報
キーワード: 仙骨座り, 坐骨座り, 多裂筋
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】腰痛症に対する理学療法では従来から体幹筋活動が重要とされている.体幹屈筋の筋力低下・体幹伸筋の筋力低下を指摘した報告がされているが,腰痛症の原因に関して統一された見解はみられていない.また,体幹表在筋のみではなく多裂筋や腹横筋などの体幹深部筋による腰部脊柱安定機能も注目され,中でも多裂筋は選択的トレーニングを行うことが重要と報告されている.選択的トレーニング方法は多く報告されているが,腹臥位や四つ這いでの体幹伸展運動が多く,高齢者には困難な肢位が多い.そのため高齢者にも容易に行えるトレーニング方法を検討する必要がある.本研究の目的は,高齢者でも容易に可能な端坐位で仙骨座りと坐骨座りでの多裂筋の変化を超音波診断装置を用い非侵襲的に測定し,筋収縮の確認をすることである.
【方法】対象は腰痛の既往歴がない健常成人16名(男性:8名 女性:8名),平均年齢27±4.3歳である.肢位は膝関節90度屈曲位で膝窩を座面端に接触させ上肢を大腿部に乗せた端坐位とし、体圧分布測定装置(FSA)を用い仙骨座りと坐骨座りの2種類を行った.仙骨座りは座圧計で両坐骨・仙骨の3点に圧が集中した時とし,坐骨座りは座圧計で両坐骨の2点圧が集中した時とした.マーキングを第4腰椎棘突起にし,そこへ超音波診断装置(アロカ社製 SSD‐5500)の深触子(3.5-7.0MHzコンベックス型)を当て左右の多裂筋の筋厚変化を録画した.録画した画像で多裂筋の筋膜から筋膜の厚さ(以下:筋厚)を計測し2種類の測定肢位にて筋厚を比較した.これらはすべての対象者にインフォームドコンセントを得て実施した.
【結果】多裂筋の筋厚において仙骨座り時(右:2.44±0.44cm 左2.39±0.43cm)と坐骨座り時(右:2.79±0.45cm 左:2.75±0.51cm)では,有意に坐骨座り時の筋厚増加が認められた.(P<0.05).しかし,その時における左右の多裂筋の筋厚には有意差は認められなかった.
【考察】先行研究により健常成人において多裂筋と脊柱起立筋の断面積および直径の左右差はなかったと述べられている.今回の結果では左右の多裂筋の筋厚に有意差は認められず先行研究と同様の結果となったといえる.多裂筋は体幹深部筋の1つで腰部脊柱安定性に関与しているといわれており,主な作用は腰椎の伸展である.今回仙骨座りより坐骨座りにて筋厚の増加が認められたのは,腰椎の前弯とともに腰椎を安定させるための多裂筋の収縮によるものと考えられる.今後は,今回確認された筋厚変化について筋電図学的検討を行っていき,筋厚の変化が多裂筋の筋収縮によるものであるかを明確にしていく必要がある.


著者関連情報
© 2008 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top