理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1329
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理学療法基礎系
高齢女性における座位・立位での後彎指数および彎曲頂点の高さの検討
寺垣 康裕新谷 和文臼田 滋
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抄録

【目的】
脊柱後彎増加と呼吸機能・ADL・QOL低下の関連性は報告されているが、後彎の程度や彎曲頂点の高さを姿勢別に検討した報告は少ない。本研究の目的は、高齢女性における座位・立位での後彎指数と彎曲頂点の高さを検討し、姿勢別の脊柱後彎の特徴を明らかにすることである。
【対象】
対象は、研究の同意が得られたデイサービス利用中の立位保持可能な高齢女性34名(平均年齢85.4±4.9歳、介護度中央値は要介護1、整形外科疾患17名、脳血管疾患10名、その他7名)であった。
【方法】
脊柱後彎評価は、自在曲線定規にて第7頚椎(C7)~第4胸椎(L4)棘突起までの背部の彎曲を紙上に模写し、C7とL4を結ぶ直線L、彎曲頂点から直線Lまでの垂線Hを用い、Milneらに準じた後彎指数(H/L×100)とL4からの彎曲頂点の高さの割合(頂点の高さ:%)を算出した。立位は両上肢下垂・足部の幅は任意、座位は腕組み・足底非接地とし、「楽な姿勢(安楽位)」「出来るだけ良い姿勢(修正位)」と指示した4姿勢での指標をそれぞれ算出した。後彎指数と頂点の高さの姿勢による違いをt検定・ピアソン相関係数にて分析、後彎指数と頂点の高さ・年齢の関連性をピアソン相関係数にて分析し、有意水準は5%未満とした。
【結果および考察】
後彎指数平均値は、座位では安楽位16.4±4.9、修正位14.0±4.8、立位ではそれぞれ15.1±5.2、13.7±5.0となり、座位・立位ともに修正位で有意に低値(p<0.000)、安楽位では座位にて有意に高値(p<0.01)を示したが、修正位では立位・座位間に有意な差を認めなかった。頂点の高さ平均値は、座位ではそれぞれ50.3±4.8%、51.4±6.5%、立位ではそれぞれ51.9±5.8%、52.4±6.2%であったが、いずれも有意な差を認めなかった。4姿勢の後彎指数間の相関係数は0.857~0.926(p<0.01)、頂点の高さ間では0.415~0.860(p<0.05)であった。後彎指数と頂点の高さは4姿勢間に中等度以上の関連性があり、座位安楽位にて後彎は増加し、姿勢修正にて座位・立位での後彎は同程度となるが、彎曲頂点の高さは変化しないという特徴が見出せた。後彎指数と頂点の高さ・年齢の関連性は、立位安楽位にて後彎指数と頂点の高さ間の相関係数が-0.351(p<0.05)、年齢間では0.344(p<0.05)となり、後彎増加に伴い彎曲頂点は下方移動し、加齢に伴い脊柱後彎は増加する傾向にあった。座位での後彎増加は骨盤後傾の影響を受けた可能性があること、臨床では姿勢修正にて後彎は減少するが動作開始により再び後彎が増加する場合があること、立位安楽位後彎指数と頂点の高さ・年齢間に関連性があることを踏まえると、脊柱後彎評価としては、立位安楽位での後彎指数計測が臨床的に望ましいと考えられた。

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© 2008 日本理学療法士協会
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