理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1330
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理学療法基礎系
背臥位および立位における寛骨前後傾斜測定の信頼性
神谷 晃央名越 央樹竹井 仁
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キーワード: 骨盤, 傾斜, 信頼性
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抄録

【目的】骨盤前後傾斜の測定法として,X線やCTを用いた評価法以外では,上前腸骨棘(以下ASIS)と上後腸骨棘を傾斜計で測定する方法(1)および,ASISと大転子を結んだ線と水平線との成す角度を測定する方法(2)などがある.しかし(1)では背臥位での測定が困難で,(2)では立位において股関節角度の影響を受けやすい.そのため,背臥位と立位での骨盤傾斜を同じ骨指標を用いて比較することは困難である.臨床上,背臥位と立位の骨盤前後傾斜を比較し,また,寛骨の前後傾斜を左右で分けて評価することは,姿勢の評価・治療において重要である.そこで,寛骨の前後傾斜を簡便に測定する方法を考案し,その信頼性を検討したので報告する.
【方法】当研究は当大学研究安全倫理委員会の承認の下で実施した.対象は同意を得た健常男性10名で,平均年齢は21.9(19-23)歳であった.身長と体重の平均値と標準偏差は,173.2±4.0・67.6±5.4であった.測定項目は背臥位・立位での寛骨前後傾とし,左右20肢の骨盤を対象とした.背臥位での寛骨前後傾の測定は,安楽肢位にてASISと恥骨結合に金属製定規(横3cm・縦24cm・厚さ3mm;竹内製作所)を押し当て,その傾きを傾斜計(マルチレベルA-300;シンワ測定株式会社)にて測定した.立位での測定は,閉脚にて踵を揃えた安楽肢位とし,矢状面にてASISと恥骨結合を通る線の角度を測定した.骨指標を触診にて確認した後,シールで体表にマークし傾斜計にて測定した.研究を開始する前に,検者は事前に触診の練習を行った.測定は,同一検者が1日以上空けて2回行った.測定回数は1回とし,1度単位で角度を読み取り,前傾は+,後傾は-とした.統計処理はSPSS15.0Jを使用し,1回目と2回目の測定値を検者内の級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient:ICC)を用いて検討した.
【結果】背臥位寛骨前後傾において,1回目の測定の平均値±標準偏差は-1.50±2.95,2回目の測定は-1.10±2.47であった.ICC(1,1)は0.76であった.一方,立位寛骨前後傾において,1回目の測定の平均値±標準偏差は0±3.64,2回目の測定は-0.90±2.94であった.ICC(1,1)は0.69であった.
【考察】ICCの判定基準は,0.6以上が可能,0.7以上が普通である.結果から,背臥位・立位での寛骨傾斜角度のICCは,一定の信頼性があると言える.立位において背臥位の測定よりも信頼性が低下した理由は,重力の影響で恥骨結合が軟部組織に覆われ,定規を押し当てる測定方法ができなかったためと考える.しかし,過去の報告では,両側のASISと恥骨結合の面を自家製測定器で測定したICCは0.38であった.今回の測定方法は,測定が困難な立位での信頼性もあり,背臥位・立位ともに同じ骨指標を用いた測定が行え,さらに左右の寛骨を分けて測定できる点で有用である.今後は,さらなる信頼性の向上を図って行き,骨盤周囲の姿勢評価・治療に役立てたいと考える.

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© 2008 日本理学療法士協会
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