理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1485
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理学療法基礎系
オプティカルフローと姿勢反応における一考察
支持面の変化を見ることを通して
有馬 聡上西 啓裕池田 吉邦浦 正行中尾 和夫安井 常正後藤 秀太冨田 昌夫
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抄録
【はじめに】環境の中で動くことは、常に身体と環境との相互作用である。運動療法を行なう上での配慮として、「見え方」を変えることで「安心感」を与えることをよく行なっている。今回我々はその様な視覚的な情報の変化(以下オプティカルフロー)が身体運動にどの様な影響を及ぼすのかを動きと支持面から検証を行なったので報告する。

【方法】足が床に届かない高さのベッドに端座位となり、前方に何もない場合と安定した治療台を置いた場合の、側方リーチ動作における違いを比較した。各条件において圧センサー(アビリティーズ・ケアネット株式会社・体圧分布測定装置Xセンサー)を用いて圧センサーモニターをスクリーン上にプロジェクターにて映写、それと同期した動作の特徴を確認するために、ビデオで同一画面に収め、視覚的な分析と、平均圧力・ピーク圧力・接触域・圧中心(以下COP)の変化を数値化した。またアンケートにより台を置くことによる「安心感」と「動きやすさ」を5段階で質問した。対象は男性7名、年齢は平均年齢35.6歳±10.69身長168.9cm±4.88体重71.3±16.43の健常者である。

【結果】前方に治療台を置いた場合、圧センサーにおける平均圧力は全員が高くなった。COPの前後成分は7名中6名が前方へ移動した。ピーク圧力と接触域に特徴は見られなかった。動作観察では、動作における傾向性の変化は認められなかったが、側方移動中、後方へ崩れる傾向が軽減した。アンケートでは、前方に台を置いた場合の「安心感」「動きやすさ」共に変わらないが1名、「安心感」が変わらず「動きやすさ」が増したが2名、「安心感」が増し「動きやすさ」が変わらないが1名、両方増したが3名であった。

【考察】我々が前方に台を置くことは視覚的に前方へ安心感を与えたい時などに多い。しかし今回の研究では、台を置いた場合に必ずしも全員が「安心感」や「動きやすさ」を自覚していない。それにも関わらず、後方への崩れの軽減や、圧センサーでのCOP前方移動成分および平均圧力の増加が見られた。すなわちオプティカルフローが姿勢制御に無自覚的に影響しており、それを我々は「安心感」を与え「動きやすさ」に繋がると感じているのではないかと考える。このようなことは現象としてわかってはいても、それらを示す客観的なデータは少ない。環境と身体の相互作用をビジュアル化できる圧センサーは、重力下での動きとそれを可能にしている支持面の経時的な情報が得られることで、今後の研究に利用価値が高まると思われる。人や動物は動く時に様々な空間の情報を利用している。オプティカルフローもその情報のひとつである。動作の学習過程において、このような情報による身体運動特性を知ることは有益であると考える。

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© 2008 日本理学療法士協会
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