理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1488
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理学療法基礎系
脳卒中片麻痺患者におけるイメージ統御可能性についてメンタルローテーション課題を用いた検討
梛野 浩司松尾 篤鶴田 佳世徳久 謙太郎生野 公貴岡田 洋平高取 克彦庄本 康治
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抄録
【目的】近年、運動を獲得するなかで運動イメージを利用したメンタルプラクティスが有効であると報告されているが、運動イメージには各個人のイメージ想起能力が重要である。イメージ想起能力には鮮明性と統御可能性という2つの性質がある。統御可能性とは思い浮かべたイメージを自由に操作する能力の事であり、メンタルローテーション(MR)の能力が関与しているとされている。MRは空間内の物体などを心的に回転させる課題である。物体および身体部位を心的に回転させる能力がイメージ想起能力には重要であると考えられる。今回我々は、身体部位のMR課題に着目し脳卒中片麻痺患者の統御可能性について検討した。
【方法】参加者は本研究について理解し同意を得た当院入院中の脳卒中片麻痺患者で右片麻痺9名(男性4名、女性5名、平均年齢70.89±10.97歳;右片麻痺群)、左片麻痺9名(男性6名、女性3名、平均年齢71.0±9.47歳;左片麻痺群)、そして健常成人9名(男性5名、女性4名、平均年齢29.27±5.04;健常成人群)、合計27名を対象とした。参加者はパソコン(PC)の正面に座り課題を行った。まず、MRを伴わない選択課題の反応時間(RT)を測定するために「右」もしくは「左」の漢字1字を示した合計8枚の画像をPC画面上に無作為に表示し、対応するキーを押すように指示した。選択課題は1回のみ施行し「右」「左」それぞれのRTを平均し解析に用いた。次にMR課題RTを測定するために、背側面の左右の手の画像を0°、90°、180°、270°の4方向に回転させた合計8枚の画像を準備し、PC画面上に無作為に表示した。参加者は表示された画像を右か左かを判定し、対応するキーを押すように指示された。MR課題は2回施行し8枚の画像それぞれについて平均RTを求めた。解析はMR課題RTから選択課題RTを減じた値を真のMR課題RTとして右手と左手のそれぞれについて4方向全てで解析を行った。課題の正答率も求め3群で比較した。解析はKruskal-Wallis検定を用い、多重比較検定はScheffe法を用いた。
【結果】選択課題RTは健常成人に比べ右片麻痺、左片麻痺群ともに有意に延長していた。真のMR課題RTは右手270°(p=.006)、90°(p=.005)、左手0°(p=.022)、180°(p=.040)、270°(p=.021)、90°(p=.050)において有意差を認めた。多重比較検定では右手270°と90°において左右の麻痺間および右片麻痺群と健常成人群間で有意差を認めた。左手0°、90°においてはでは3群間で有意差を認めなかった。左手180°では左片麻痺群と健常成人群間、左手270°では右片麻痺群と健常成人群間で有意差を認めた。正答率については3群に有意な差は認められなかった。
【考察】イメージの統御可能性について脳卒中片麻痺患者は健常成人に比べて悪くイメージ想起能力が劣る可能性が考えられた。また右片麻痺患者は左片麻痺患者に比べMR課題RTが延長しており、イメージ想起能力が劣る可能性が考えられた。
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© 2008 日本理学療法士協会
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