理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1496
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理学療法基礎系
実験的脳梗塞ラットの経時的骨格筋の変化について
入江 愛松田 史代生友 聖子池田 恵子山崎 芳樹榊間 春利吉田 義弘
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抄録

【目的】
脳血管障害後の骨格筋に対して運動を行い、経時的に骨格筋を観察した研究は少ない。そこで今回、中大脳動脈領域閉塞の脳梗塞ラットを作成し、脳梗塞作成1日後より14日間トレッドミル運動を行い、骨格筋の変化について経時的に検討した。
【方法】
8週齢のWistar系雄性ラット30匹を用い、トレッドミル運動群と非運動群に分けた。脳梗塞は小泉らの方法に準じて、塞栓を左内頚動脈に向けて挿入、結紮・固定し、90分後再開通し作成した。運動群は術後1日より毎日20分間のトレッドミル走行を最長14日間行い、トレッドミルの速度は1~3日3m/min、4~6日は8m/min、7~14日は13m/minと上げていった。術後1,3,5,7,14日後(各3匹)のラットのヒラメ筋を摘出し、筋湿重量を測定した。摘出した筋は凍結固定し、厚さ10μmの横断切片を作成した。切片は室温で乾燥させた後、ヘマトキシリン・エオジン染色、ATP-ase染色(pH10.6)を行い、筋線維の形態の観察、筋線維のタイプ構成、横断面積を測定した。運動群・非運動群の比較には対応のないt検定を用い、左右の比較には対応のあるt検定(p<0.05)を行った。本研究は、鹿児島大学動物実験委員会の承認を得て実施した。
【結果】
非運動群7日目で、麻痺側は反対側に比べてタイプ2線維の比率が多く、また麻痺側14日目で非運動群は運動群と比べて、タイプ1線維の比率が多く、ともに筋線維タイプ構成で有意な差がみられた。また麻痺側5日目で、非運動群に比べて運動群はタイプ2線維の横断面積が有意に大きかった。ヒラメ筋の筋湿重量や筋線維の形態は両群に有意な差は見られなかった。
【考察】
今回の結果より、脳血管障害後運動することで筋線維のタイプ変換やタイプ2線維の筋萎縮を抑制する可能性が示唆された。筋線維タイプ構成では、非運動群でタイプ1線維が減少し、タイプ2線維の増加がみられ、除皮質ラットモデルを用いた先行研究でも同様の傾向がみられたことから、上位運動ニューロン障害が起こるとタイプ1線維からタイプ2線維へのタイプ変換が起こることが考えられる。運動群ではタイプ1線維が増加、タイプ2線維の減少がみられたことから、運動することにより筋線維のタイプ変換を抑制する可能性が考えられる。また、筋萎縮に関しては、活動性の高いものでも萎縮がみられるという報告もあることから、今後萎縮の原因を廃用だけに限らず、中枢性の要因も検討していく必要がある。
【まとめ】
中枢神経障害後の運動介入が骨格筋に与える影響について経時的に検討した。中枢神経障害後、タイプ1線維からタイプ2線維へのタイプ変換やタイプ2線維の萎縮が起こるが、運動によりこれらが抑制されることが示唆された。

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© 2008 日本理学療法士協会
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