理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1524
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理学療法基礎系
脳卒中片麻痺者の不安定板上での座位バランス能力とADLの関連性
原嶋 創田口 孝行山中 恵美若林 綾子永田 好美
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キーワード: 不安定板, 座位バランス, ADL
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抄録
【目的】本研究の目的は、脳卒中片麻痺者に対して、不安定板上での座位バランス能力とADLの関連性について検討することである。

【方法】対象は慢性期脳卒中片麻痺者34名(男性17名、女性17名、73.8±9.5歳(平均±標準偏差)、右片麻痺17名、左片麻痺17名、麻痺側下肢Br. Stage2:1名、3:11名、4:10名、5:8名、6:4名)とした。いずれの対象者も聴覚視覚障害、高次機能障害を認めず、研究内容を理解できる者とした。不安定板を用いた座位バランス能力測定では、ディジョックボード・プラス(酒井医療社製)を使用した。本器機は、不安定板に内蔵された加速度計によって傾斜量を測定でき、傾斜角度変化を軌跡としてコンピュータ(PC)画面に即時的に表示できる。本研究での不安定板の設定は左右傾斜設定とした。座位姿勢は、足底接地にて不安定板上で端座位、膝関節が約90度になるよう設定した。座位バランス能力測定の手順は、1)左右傾斜0度に合わせ30秒間保持、左右各最大移動軌跡の2)20%・3)50%・4)80%に出現する目標点を30秒間追従させそれぞれの目標点到達数を測定した。この測定結果から座位バランス能力を1)のみ可能:レベル1、2)まで可能:レベル2、3)まで可能:レベル3、4)まで可能:レベル4に分類した。各条件において、測定時間内に上肢の使用や著しくバランスを崩した場合は測定不能とした。ADL能力として機能的自立度評価法(FIM)の食事、トイレ動作、更衣(上)、更衣(下)、整容、入浴、移乗を調査した。移動能力は歩行自立の可否を調査した。座位バランス能力レベルとADL能力の関係はSpearmanの順位相関係数を用い、有意水準5%未満とした。また、レベル3の可否、及びレベル4の可否が歩行自立に関与しているかについてロジスティック回帰分析を用いて検討した。

【結果】座位バランス能力レベルは、レベル1:4名、レベル2:5名、レベル3:4名、レベル4:17名、測定不能:3名であった。座位バランス能力レベルと有意な相関関係が認められたADL項目は、トイレ動作(r=0.52)、更衣(下)(r=0.436)、整容(r=0.428)、入浴(r=0.452)、移乗(r=0.413)であった。レベル3、レベル4の可否と歩行自立との関係では有意なオッズ比(それぞれ5.3、8.6)が得られた。

【考察】今回の不安定板上での座位バランスは、視覚情報のフィードバック、頭部・体幹・下肢の支持性及び協調性が求められた。本研究の結果より、座位バランス能力レベルが高いほどADL能力は高いことが示された。また、レベル3が可能な歩行自立者の割合は、レベル3が不可能な歩行自立者に比べ約5倍高く、レベル4では約8倍高かった。座位バランス能力レベルはADL能力や歩行自立度の一つの指標になり得ると考えられた。
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© 2008 日本理学療法士協会
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