理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1548
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理学療法基礎系
反復経頭蓋磁気刺激による運動関連電位変化
松浦 晃宏小黒 浩明山口 修平
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抄録
【目的】
脳卒中片麻痺患者の運動機能回復過程において同側運動皮質の関与が示唆されており,特に回復初期においては同側経路の働きにより運動機能の再構築が起こるとされる.一方で,非麻痺側の鏡像運動など,非麻痺側の過剰活動は臨床上しばしばみられ,麻痺側の回復を阻害する要因とも考えられる.そこで我々は,健常成人の片側運動皮質に反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation:rTMS)を行い,同部を賦活化させた後の対側運動皮質の活動を運動関連脳電位(movement related cortical potential:MRCP)により記録した.これにより,運動同側運動皮質の活動修飾が手運動に関連した対側運動皮質活動に与える影響について検討した.
【方法】
対象は右利き健常男性6名(23-27歳)とし,全被験者に実験の目的,危険性等を説明して同意を得た.
rTMSは,左一次運動野の右手関節背屈筋のhot spotに8の字コイルを用いて刺激した.刺激強度は安静時運動閾値の100%,3Hzで300発のrTMSを施行した.このrTMS前後において4~6秒に1回のすばやい随意的な左手背屈運動に関連する脳波(electroencephalogram:EEG)を記録した.EEGは国際10-20法に基づいて記録された全箇所のうち,運動野近傍のCz,C3,C4を用い,30-50回分のデータを加算処理した.解析区間は運動開始前の3500msから開始後500msとした.得られたMRCP波形を500ms毎に分け,それぞれBP1(-3500~-3000ms),BP2(-3000~-2500ms),BP3(-2500~-2000ms),BP4(-2000~-1500ms),BP5(-1500~-1000ms),NS1(-1000~-500ms), NS2(-500~0ms)とし,基線と波形に囲まれた面積を求めた.また,MRCPの最大振幅も求め,rTMS前後におけるそれぞれを対応のある差の検定を用いて比較した.有意水準は5%未満とした.
【結果及び考察】
BP2ではCz,C4(P<0.01),C3(P<0.05)において,BP3ではCz(P<0.05)において有意なrTMS後の増加を示し,これはrTMS後のMRCP開始時間の早期化を反映しているものと考えられた.その他のBPとNSでは有意差を認めなかった.MRCPの最大振幅においてはrTMS後に振幅は低下する傾向はみられるものの,有意差は認められなかった.
左一次運動野への3Hzの高頻度rTMSは,大脳半球間抑制により右運動皮質の活動性を低下させた.それにより,左手背屈のための運動電位は低下の傾向を示し,運動準備のプロセスを早める結果となったと考えられる.このことは対側rTMSが運動機能を修飾し,機能回復の補助として使える可能性を示唆している.
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© 2008 日本理学療法士協会
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