理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 711
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神経系理学療法
片麻痺者における前型FRTの有用性
筋力・バランス能力との検討
竹ヶ原 智行久保田 健太伊藤 俊一隈元 庸夫伊藤 梢佐藤 千春小川 峻一矢野 勇輝二階堂 愛弓
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抄録
【はじめに・目的】我々は第42回日本理学療法学術大会にて,片麻痺者におけるFunctional Reach Test(以下,FRT)と麻痺側下肢を一歩前に出した前後開脚肢位でのリーチ評価(以下,前型FRT)を比較検討し,前型FRTは麻痺側荷重量・重心移動とより相関し,歩行能力との関連性がより高いことを報告した.しかし前型FRTは麻痺側膝伸展筋力,他のバランス評価との検討,日常生活活動(以下,ADL)との関連性の検討が今後の課題となった.近年,片麻痺者に対する理学療法は,麻痺側下肢筋力やバランス能力に対するアプローチがさらに重要視されている.麻痺側筋力については,等速性筋力測定装置やhand-held dynamometer(以下,HHD)で測定する方法が多数報告されているが,これら機器を常備している施設は少なく,筋力・バランスを反映できる簡便な臨床評価が必要と考える.
今回,片麻痺者に対して前型FRTとFRTを実施し,膝伸展筋力との関連性を比較検討すること,またバランス能力,歩行能力およびADLとの関連性を比較検討し,前型FRTの臨床的有用性を再検討することを目的とした.

【対象と方法】対象は,片麻痺者30名(男性17名,女性13名,発症からの平均期間57.5ヶ月)とした.前型FRTは,先行研究での方法に準じて,またFRTは原法に準じて施行させそれぞれのリーチ距離を測定した.膝伸展筋力測定はHHDを用いて,端座位下腿下垂位における等尺性膝関節伸展筋力を麻痺側・非麻痺側ともに測定し,体重で除した値を求めた.検討項目として,前型FRT,FRT,両側膝伸展筋力,functional balance scale(FBS),最大10m歩行時間,functional independence measure(FIM)を使用し,前型リーチ・FRTと各検討項目との関連性について比較検討した.前型FRT・FRTのリーチ距離と膝伸展筋力測定の再現性には級内相関係数(ICC),前型FRT・FRTと各検討項目の関連性に関してはSpearmanの順位相関係数を用いて統計処理を行い,有意水準は5%未満として検討した.

【結果】前型FRT・FRTのリーチ距離と膝伸展筋力の測定は,いずれもICC=0.8以上と高い再現性を認めた.膝伸展筋力との検討では,前型FRTはFRTと比較して麻痺側膝伸展筋力がより高い相関を示したが,非麻痺側膝伸展筋力に関しては,どちらも相関が認められなかった.またFRTと比較して前型FRTはFBS,最大10m歩行時間,FIMともにより高い相関を示した.

【考察】以上の結果,片麻痺者における前型FRTはFRTよりも麻痺側膝伸展筋力・バランス能力をより反映し,歩行能力やADLに関連する評価法として臨床的に有用であると考えられた.
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© 2008 日本理学療法士協会
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