理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 719
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神経系理学療法
急性期頚髄損傷患者に対するチームアプローチの一例
摂食・嚥下機能改善を通して
中村 浩明加藤 秀敏古屋 真智子加藤 太郎古野 薫高橋 正明羽生 昇
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抄録
【はじめに】急性期頚髄損傷患者は、呼吸および全身状態管理のために安静が優先され、臥床に伴う二次的合併症がQOLを著しく低下させてしまう事を多く経験する。今回紹介する症例も、呼吸状態不良、栄養状態不良、意欲低下が著明にみられ、残された機能である摂食・嚥下機能をチームとしてアプローチし、改善が図れたのでここに報告する。
【症例紹介】66歳、男性。解体業者。診断名:脊髄損傷。頚椎C6、7脱臼骨折。C6以下完全麻痺。右脛骨骨折、肋骨骨折合併。2007年3月5日解体作業中に3階から転落外傷し、同日当院にて頚椎前方固定術試行。術後、人工呼吸器管理となり、3月10日抜管するが、痰詰まりによりSPO2 70%台まで低下、再度人工呼吸器管理となる。喀痰量多く、吸引回数頻回で、呼吸状態不良であった。3月15日より経管栄養開始となる。
【理学療法評価および治療】2007年3月16日よりリハビリ開始。頚部固定装具使用。意識は傾眠傾向。人工呼吸器設定はCPAP(FiO2 0.5、PEEP 6、PS 6)でSPO2 98%。奇異性呼吸パターンがみられ、両肺野air入り不良であった。また、喀痰排出困難で、画像上右肺野全体に透過性低下がみられ、肺炎と無気肺を呈していた。理学療法評価では、MMT 上腕二頭筋3/3、手指屈筋1/1、手指伸筋0/0で、感覚障害は温痛覚、触覚ともにTh3~4レベルまでは残存していた。治療は、呼吸理学療法を中心に実施した。胸郭運動の介助、体位変換を中心に行なった。3月22日に抜管、ミニトラック挿入するも喀痰量多くair入り不良であった。血液ガス所見上、CO2蓄積著明であったため、4月2日気管切開施行しカフ付カニューレ使用となる。4月26日に再度抜管されトラキオマスクで経過観察となった。8月9日、呼吸状態も安定し、HOPEに挙がった摂食・嚥下機能の評価をするため、嚥下造影検査(以下VE)施行した。喉頭挙上不良、唾液誤嚥、咳嗽力低下が著しくみられた。そこで咳嗽力を高めるようPTは、咳嗽練習、離床環境推進、OTは頚部、肩甲帯リラクゼーション、STは嚥下のタイミング練習を積極的に実施した。10月4日VE再施行時、唾液誤嚥、咳嗽力低下はまだ残存していたが、喉頭内知覚低下と喉頭挙上の改善がみられ少量の水の摂取可能となった。
【結果】チームアプローチにより呼吸状態不良、喀痰排出困難だった症例が状態改善し酸素OFFとなった。咳嗽力低下はまだみられるが、喉頭内知覚低下と喉頭挙上の改善がみられ少量の水分摂取可能となった。
【考察およびまとめ】PT、OT、STが一つの目標に向けて積極的に治療を行ってきたことが呼吸および全身状態不良改善に繋がってきたのではないかと考えられた。早期から残存機能を的確に捉え、チームとして各職種間が同じ目標に向けてアプローチをすることが大切であると考えられた。
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© 2008 日本理学療法士協会
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