理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1122
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神経系理学療法
ポストポリオへの対応1:東海地区におけるポリオ患者実態調査
鈴木 由佳理才藤 栄一沢田 光思郎横山 通夫尾関 恩水野 元実西尾 美和子余語 孝子松田 文浩日高 慶美尾崎 健一
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抄録

【目的】 現在,日本では,ポリオワクチンの普及によってポリオの新規発症はほとんどないが,ポリオ経験者の高齢化に伴って新たな筋力低下・易疲労性を呈するポストポリオ症候群(PPS)が急増している.ポリオ患者のPPS発症の現状把握を目的に,ポリオ友の会東海地区と共同で会員を対象にアンケートによる実態調査を行った.
【方法】 平成19年4月~10月にポリオ友の会東海地区会員161名に対し,記名式のアンケートによる実態調査を行った.
調査項目は,基本情報(性別,年齢,肥満度(BMI),職業),社会制度利用(身体障害者手帳,介護保険),疾患(既往歴,併存症,手術歴)の有無,身体症状の変化(麻痺や筋力低下など),PPSに対する自覚症状・不安感,装具の使用状況・悩みとした.
【結果】 アンケート配布数161に対して,127名から回答(回収率78.9%)を得た.男女比は男性32%,女性68%,調査時平均年齢は61歳であった.
発症時平均年齢は2歳であり,3歳までに85%が罹患していた.肥満度については, BMI 25以上が18%存在した.
社会制度の活用状況については,身体障害者手帳等級の取得は3級で最も多く,27%を占めた.介護保険の認定者は全体の12%に留まっていた.
ポリオによる麻痺の分布は,左下肢で最も多く,次いで右下肢,右上肢,左上肢の順であった.また,ポリオによる身体症状に対する手術経験は36%の患者においてみられ,うち17%がアキレス腱延長術を受けていた.また,ポリオ以外でADLに影響を与える既往歴として,虚血性心疾患,骨折,脳卒中などがあり,併存症では頸髄症,高血圧,腰部脊柱感狭窄症,糖尿病などが挙げられていた.
「5年前と比較した際の体調の変化」については,「かなり不調」,「やや不調」と回答する患者が全体の73%を占めていた.自覚症状では,疲労が最も多く,次いで筋力低下,冷感,関節痛,しびれ,嚥下障害の順であり, 89%の患者がPPSに対する不安を抱いていた.
装具の使用状況については41%が使用しており,そのうち装具に対する悩みを抱えている患者が54%を占めていた.
【考察】 ポリオ友の会東海地区と共同でアンケート調査を行った.今回の調査結果は,2003年に行われた全国ポリオ会連絡会の全国調査結果とおおむね類似していたが,PPSに関する自覚症状や不安感の項目は4年前の全国調査に比べ高値を示した.すなわち,PPS発症を疑わせる回答者は70%を超えていた. 4年間の経過によってPPSの発症者や増悪者が増えたこと,あるいは,知識普及が不安の増大に結びついた可能性があろう.
【まとめ】 PPS発症者は高率にのぼると考えられ,定期検診による正確な診断,個別生活指導,効果的なリハビリ方法の開発(四肢別運動強度・頻度の設定など)が急務と考えられた.

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© 2008 日本理学療法士協会
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