理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1123
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神経系理学療法
ポストポリオへの対応2:装具療法の経験
水野 元実才藤 栄一沢田 光思郎鈴木 由佳理西尾 美和子余語 孝子日高 慶美松田 文浩横道 通夫尾関 恩尾崎 健一
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抄録

【目的】当大学リハビリ部門では,2006年秋からポリオ友の会東海地区と共同でポストポリオ症候群(Post-Polio Syndrome:PPS)への対応プロジェクト「BGraS プロジェクト」を開始した.PPSへの対応では,1)生活スタイル調整,2)運動療法,3)装具療法が三本柱となる.このうち,装具療法について現時点での理解を報告する.
【方法】2006年12月~2007年11月までに装具について作製や相談を希望したポリオ患者165名を対象とした.初診時,装具を有していたものは97名で,このうち装具に対して不満感を有しているものが36%,装具に関する悩みを抱えているものが61%であった.受診動機で装具診察希望者は65例であった.
現時点で装具外来対応し,新規に作製したものは,治療靴2足,短下肢装具6本,長下肢装具1本であった.また,修理したものは短下肢装具3本であった.
【結果】装具の悩みでは重量感,不適合,歩きにくい,疼痛出現等,多岐に渡っていた.今回装具外来で対応した症例では,機能や歩容の変化による歩きにくさや安定性の低下,疼痛の出現などが認められた.
1)症例A:筋力低下により歩容に変化が生じ、違和感を生じていた.また、健脚への負担が多くなり疲労感が増していた.このため、屋内装具の修理と屋外装具の作り替えを行った.修理では,足継手の角度,ロッカー足底の位置やウエッジの調整とSACHヒールの付加を行った.新規作製では,後方平板支柱型短下肢装具を基本にロッカー足底を付加したが,修理時同様,適切位置・高さを決定するのに苦労した.そのため,後述する評価用ロッカー足底セットを考案した.
2)症例B:長下肢装具で歩行していたが,歩きにくさと不適合による疼痛が出現していた.後方平板支柱型長下肢装具に作り替え,足関節部は固定とし,SACHヒールを付加した.
【考察】PPSへの対処として過用の予防が必要となる.特に,下肢に麻痺肢を抱えた歩行において,過負荷を軽減させる装具療法は有用な手段となる.PPS患者は,患足が小さく患脚が短い点で装具の容積を確保しやすく有利である.一方,装具受け入れを逡巡する例が多い,活動性の高い例が多く装具に対する要求水準が高い,などが困難点である.
短下肢装具の目的は,側方安定性確保と膝伸展補助が主たるものである.麻痺が重度でも極めて巧妙に歩く例が多いため,設定には細心の注意が必要で,足継手調整が簡便かつ正確に行える装具を用いるべきである.膝伸展補助のために足継手を底屈域で固定する際には,スムースな体重移動を妨げないようにロッカー足底が必要となる.患者にあわせたロッカー足底の設定は手間を要するため,山位置と高さを容易に変更できる評価用ロッカー足底セットを考案した.長下肢装具は,健側機能の増悪がある場合に必要となる.短下肢装具に比べ歩容が大きく変わってしまう.足継手の背屈制限は立位での支持性を増やすが,歩行時の前方推進を妨げる.

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© 2008 日本理学療法士協会
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