理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1618
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神経系理学療法
維持期脳卒中片麻痺患者に対する歩行感覚呈示装置 Gait Master を用いた歩行リハビリテーションの効果
田中 直樹高尾 敏文飯塚 陽箕輪 都志美山﨑 裕美勝又 哲斉藤 秀之中島 陽介矢野 博明奥野 純子柳 久子戸村 成男小関 迪
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抄録

【はじめに】近年、歩行リハビリテーション(以下、歩行リハ)においてロボット技術の応用が試みられており、我々も第41回、42回の本大会において、歩行感覚呈示装置 Gait Master3 による歩行リハにより歩行能力の向上が得られた症例を報告した(小田川2006、田中2007)。そこで我々は、維持期脳卒中片麻痺患者を対象に、改良型歩行感覚呈示装置 Gait Master4 (以下、GM4)による歩行リハの効果を確立する目的で介入研究を計画したので現状について報告する。
【GM4とは】GM4とは片足毎に独立した床面のフットパットが前後、上下方向に移動することにより等速反復歩行運動を可能とする装置である。フットパットの移動はプログラムによって制御されており、歩行軌跡や歩行速度を自由にかつ容易に調節することが可能であり、理学療法士による患者への操作も可能である。
【対象】対象はGM4を実施可能な能力を有し、かつ本研究の目的に同意が得られた維持期脳卒中片麻痺患者6名(男4名、女性2名)、平均年齢60.8±9.2歳(範囲49-74歳)である。内訳は右片麻痺3名、左片麻痺3名で、発症からの期間は48.2±30.1ヶ月(範囲22-102ヶ月)、平均FIM得点は114.3±5.9点であった。
【方法】方法はベースライン期、介入期、観察期を設定し、ベースライン期4週間、介入期は対象者の都合上、歩行リハの頻度を週2回あるいは3回とせざるを得ないため、合計12回終了までの期間とし、介入終了後4週を観察期とした。介入であるGM4による歩行リハの設定条件は、実施時間20分間、歩行速度は患者の快適歩行速度の2倍を目標とし、患者が耐えうる最大の歩行速度とした。評価項目は10m歩行速度、Timed Up & Go Test(以下、TUG)、Hand-held dynamometer(ANIMA社製μtas-MF01)による股関節、膝関節の等尺性筋力とした。それらの評価はベースライン期では開始から1週毎、介入期では歩行リハ3回終了毎、観察期は介入終了後から1週毎の頻度で実施した。統計学的検討では反復測定分散分析を用い、有意水準を5%未満とした。なお、本研究は筑波記念病院倫理委員会の承認を得ている。
【結果および考察】6症例の平均介入期間は33.2±10.6日であった。10m歩行速度、TUG、両側股関節屈曲および伸展筋力において、介入期では改善を認め、観察期での持続効果傾向が示された。特にGM4による歩行リハが10m歩行速度(F=2.02、p<0.05)、TUG(F=3.77、p<0.05)、麻痺側股関節屈曲筋力(F=2.16、p<0.05)、麻痺側股関節伸展筋力(F=2.27、p<0.05)に有意な影響を与えていることが示唆された。これより、GM4による歩行リハは、維持期脳卒中片麻痺患者において歩行能力、動的バランス、麻痺側筋力の改善に影響すると考えられ、維持期における理学療法戦略の一助になると考えられる。

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© 2008 日本理学療法士協会
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