理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1617
会議情報

神経系理学療法
脳卒中片麻痺患者の要介護度と移動能力,ADL能力との関係について
TUG,CS-30,BIの評価から
田代 美由紀半田 一登濱田 哲郎廣滋 恵一村上 かおり右田 寛
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キーワード: 要介護度, 移動, ADL
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抄録
【目的】要介護度認定は介護サービス時間を指標として分類されているため、要介護度の高さと障害の重症度は必ずしも一致しないと言われている。本研究の目的は、脳卒中片麻痺患者における介護保険認定の有無、要介護度と移動能力、ADL能力が関連しているかを調べることである。
【方法】今回の研究趣旨を説明し、承諾を得ることができた脳卒中片麻痺患者63名(脳梗塞36名、脳出血27名、男性40名、女性23名、平均年齢66.0±9.5歳、発症からの平均年数7.9±4.6年)を対象とした。1、現在の介護保険の認定の有無と要介護度、基本的情報(病型、性別、年齢、発症からの年数、普段の歩行様式)の収集。2、評価内容を熟知したPTによるTimed up & Go Test(以下TUG)、30秒椅子立ち上がりテスト(以下CS-30)、Barthel Index (以下BI)を実施した。要介護度とTUG、CS-30、BIの関連性についてはSpearmanの順位相関分析を用いた。介護保険が認定された群(認定群)と認定されていない群(非認定群)に分け、TUG、CS-30、BIの2群間の比較検定(T検定、Mann-Whitney検定)を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】介護保険認定者44名(うちサービス利用者32名)、非認定者19名であった。要介護度とTUGは正の相関(相関係数=0.65)、CS-30は負の相関(相関係数=-0.66)、BIは負の相関(相関係数=-0.75)を認めた(p<0.01)。要介護度別の平均値は非認定,要支援1・2,要介護1,要介護2,要介護3,要介護4の順にTUG(12.7±4.0秒,22.2±10.1秒,23.9±13.5秒, 32.1±15.8秒,41.2±28.0秒,25.0秒)、CS-30(11.6±3.6回,9.1±4.9回,8.8±4.7回,5.4±4.3回,2.2±3.4回,1.0±2.0回)、BI(98.4±4.7点,91.1±8.2点,93.9±5.5点,83.8±14.8点,62.5±19.2点,42.5±32.3点)となった。また、認定群、非認定群に病型、年齢、発症からの年数では有意差は認めなかったが、認定群は女性の割合が有意に高かった(p<0.05)。2群の平均値では認定群,非認定群の順にTUG(28.5±16.9秒,12.7±4.0秒)、CS-30(6.3±5.0回,11.6±3.6回)、BI(81.6±21.2点,98.4±4.7点)でそれぞれ有意差を認めた(p<0.01)。
【考察】介護保険認定の有無、要介護度が脳卒中片麻痺患者の移動能力、ADL能力と関連していることがわかった。要介護度認定は認知面や生活の自立度も考慮されているが、移動能力やADL能力も適切に評価されていると考える。また、認定群、特に要介護度の高い方は移動やADL面での能力低下が明らかとなり、今後、生活支援とともにリハビリによる身体機能の維持も必要であると考える。
【まとめ】脳卒中患者の要介護度と移動能力、ADL能力の関係を検討し、要介護度認定は移動能力、ADL能力を反映していることがわかった。要介護認定においては、生活環境や認知面、介護する家族の状況なども関連していると考えられるので、それらの因子についても今後検討していきたい。
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© 2008 日本理学療法士協会
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