理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 91
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骨・関節系理学療法
変形性膝関節症に対するドクターバランスの効果
竹本 陽一古見 信子横山 恵子西本 章森中 茂本窪 義親東 幸司岡田 武志
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抄録

【目的】
内側変形性膝関節症(以下膝OA)患者に対し外側ウエッジは一般的に使われている。立位では膝の荷重線を内側から外側に移動させる効果があるが、歩行ではその効果が言及されていないように感じる。当院では母趾側への重心移動によって歩行時の推進力が得られると考え、改良型外側ウエッジ(以下ドクターバランス)を作成し、良好な成績を得ている。今回、その効果について調査し、若干の知見を得たので報告する。
【対象と方法】
対象は当院で膝OAと診断され、ドクターバランスを処方された392名より、50名(年齢73.1±9.3歳、装着期間14.1±9.8ヶ月、対象70膝)を無作為に抽出し調査した。Gradeは全例1・2であった。方法はドクターバランス装着前後の、VASによる疼痛変化と日本整形外科学会変形性膝関節症治療成績判定基準(以下判定基準)を用い効果を判定した。特徴的な症例に対しドクターバランス、外側ウエッジ、裸足での歩行解析を行った。尚、全症例に本研究の趣旨を説明し同意を得た。ドクターバランスの特徴は1)外側ウエッジを前足部まで伸ばしている 2)足底板の母趾側を低くすることで歩行時の重心を母趾側へ誘導する 3)中足骨パッドを付けることで前足部のアーチを適正に保持することができる。の3点である。
【結果】
VASではドクターバランス装着前5.6±2.7、装着後2.7±2.1で有意な改善が得られた。判定基準項目では「疼痛・歩行能」装着前23.6±6.8、装着後26.9±5.2「疼痛・階段昇降能」装着前10.6±8.2、装着後16.6±7.4「屈曲角度および強直・高度拘縮」装着前28.7±3.8、装着後30.8±4.1「腫脹」装着前7.1±4.0、装着後9.4±2.2ですべてにおいて有意な改善が得られた。歩行解析では3パターンとも踵接地で床反力の違いは殆どなかったが、つま先離れにおいてはドクターバランス、外側ウエッジ、裸足の順で床反力は強かった。立脚期の長さも同順であった。
【考察】
ドクターバランス装着前後のVAS、判定基準で効果が得られた理由として、外側ウエッジを足趾まで延長した事と、中足骨パッドを付けたことと考える。足趾まで延長した事で膝関節において患肢立脚期の下肢荷重線を内側から外側へ誘導し、脛骨大腿関節の接触圧が分散でき、母趾を低くすることによって立脚中期から踵離地の重心を母趾側に誘導し踏み切り期の推進力を向上させたと考える。この時中足骨パッドはshock absorberと足部の重心移動を助ける働きをすると考えられる。判定基準の「疼痛・階段昇降能」の項目で改善率が高かったのはドクターバランスを装着することで膝の生理的な動きに近づいたためと考える。歩行解析の結果からもその効果が伺える。実際に大半の症例で疼痛の著明な軽減と歩行が楽になった事で十分な満足感が得られている。

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© 2008 日本理学療法士協会
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