理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 101
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骨・関節系理学療法
術側の違いからみた片側THA患者の重心動揺および術側下肢荷重率の検討
薮越 公司石田 睦美中木 哲也牧野 洋平神戸 晃男山口 昌夫
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キーワード: THA, 重心動揺, 荷重率
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抄録

【目的】片側に人工股関節全置換術(以下THA)を施行された変形性股関節症(以下変股症)患者の、術側(利き足・非利き足)の違いが立位保持における荷重バランスに与える影響を調べた。
【対象】2005.04から2007.08までに筆者が担当した変股症患者62名の内、術側は末期または進行期、反対側は正常または前期股関節症と診断され、一側に初めてTHAを施行し、利き足(無意識にボールを蹴る足と定義)を右とする18名を、術側が利き足の利き足群8名(男性1名,女性7名,平均年齢59.3±5.2歳)と、術側が非利き足の非利き足群10名(男性1名,女性9名,平均年齢60.2±6.9歳)の2群に分けた。課題の遂行が困難な疼痛や下肢の痺れなどを有する者は、対象から除外した。また利き足を右とする健常成人23名を20代から40代の若年群10名(男性5名,女性5名,平均年齢27.3±8.2歳)と50代から70代の(患者との)同年群13名(男性1名,女性12名, 平均年齢60.9±6.9歳)に分け、立位保持における外周面積(以下EA,cm2)及び、術側(健常者では利き足)下肢への荷重率(以下荷重率,wt%)を計測し、変股症患者と比較した。
【方法】EAおよび荷重率の測定には、アニマ社製グラビコーダG-7100を使用し、開脚幅10cm裸足にて左右均等荷重を意識させた2分間の静止立位を保持させた。若年群・同年群・利き足群・非利き足群の4群間において、術前・術後(退院時)におけるEAおよび荷重率の比較には多重比較検定を、利き足群・非利き足群のEAと荷重率の術前後間での比較には対応のあるT検定を行った。有意水準は5%とした。
【結果】若年群・同年群・利き足群・非利き足群の術前EAは、(1.24±0.67,2.02±0.93,3.34±1.89,2.67±1.44)となり、利き足群のEAは若年群よりも有意に高値を示したが、他の群間に有意な違いは見られなかった。術後は(同前,同前,1.47±0.65,2.91±1.46)となり、利き足群の有意なEA減少の結果、非利き足群のEAは、若年群・利き足群よりも有意に高値を示した。また術前の荷重率は、(49.1±1.9,49.6±3.7,44.7±4.5,42.4±5.5)となり、非利き足群の荷重率は若年群・同年群よりも有意に低値を示したが、利き足群との差は見られなかった。術後は(同前,同前,45.3±3.8,49.9±3.5)となり、非利き足群の有意な荷重率増加の結果、利き足群の荷重率は、同年群・非利き足群よりも有意に低値を示した。
【考察】術後利き足群の立位安定性は増大するものの、術側荷重率は非利き足群よりも少なく、非術側に偏った立位姿勢である可能性が示唆された。術側が利き足側の場合、より積極的な術側への荷重練習が必要になると思われる。

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© 2008 日本理学療法士協会
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