抄録
【目的】第4回肩の運動機能研究会で、投球障害肩を患った選手の中にはコントロール群と比べ、肩関節水平外転時に肩甲帯が内転せず、上腕がscapular plane上を逸脱してしまうことを報告した。本研究の目的は、投球障害肩を患った選手を対象に、片脚ブリッジと体幹回旋訓練を行い、訓練後の肩甲帯内転角度の変化を測定比較し、肩甲帯内転角度に必要な因子を明らかにすることである。
【方法】対象は、投球時の肩関節痛を主訴とし当院を受診した7名。測定開始肢位は、ベッド上腹臥位で前腕をベッドより下垂し、肩関節外転90度、水平外転0度、肘関節屈曲90度とした。被検者には前頭部をベッド上に接地し、肩関節を外転90度に保持しながら、最大限に水平外転するよう指示を与えた。その際の頭頂と肩峰を結んだ線と水平線とのなす角度を、頭側より水平角度計を用いて測定し、肩甲帯内転角度とした。測定手順は、はじめに、肩甲帯内転角度を測定し、その後、片脚ブリッジを5秒間保持する課題を交互に5回ずつ行い、再度肩甲帯内転角度を測定した。さらに、その後、背臥位、膝関節および股関節90度での体幹回旋運動を5回行い、再々度、肩甲帯内転角度を測定するものとした。肩甲帯内転角度の測定は2度行い平均を求め、それぞれ3回の平均値を統計学的に比較検討した。
【結果】訓練前の肩甲帯内転角度は、25.7±3.5°であった。また、片脚ブリッジ後の肩甲帯内転角度は32.9±7.0°、体幹回旋運動後の肩甲帯内転角度は42.9±8.1°と、それぞれ有意(p<0.05)に増加が認められた。7人中3人が片脚ブリッジ後に肩甲帯内転角度が10°以上増加し、7人中4人が体幹回旋訓練後に肩甲帯内転角度が10°以上増加した。7人中1人は、両方の訓練後にも改善がみられなかった。
【考察】今回の結果より、肩甲帯内転角度は片脚ブリッジや体幹回旋訓練など、肩甲帯以外の訓練で改善する症例があることが明らかとなった。種々の報告によると、片脚ブリッジは、脊柱起立筋・大殿筋・中殿筋・大腿筋膜張筋・ハムストリングス・外腹斜筋などの筋活動が起こるとのことである。また、今回用いた体幹回旋訓練では、腹斜筋の筋活動と胸郭の可動性向上が得られると考えた。よって、肩甲帯内転角度は、骨盤周囲から体幹筋および胸郭の可動性の影響を大きく受けることが示唆された。また、片脚ブリッジおよび体幹回旋訓練後も、可動域が変化しない群もあるため、肩甲帯単独の機能低下、もしくは体幹の回旋機能や股関節伸展機能以外が要因で、肩甲帯内転角度が低下することも示唆された。今後、肩甲帯の十分な内転に必要な体幹の可動域や、体幹・骨盤帯の筋機能を明らかにしていきたい。
【まとめ】肩甲帯内転角度が低下している患者に、片脚ブリッジや体幹回旋訓練を行うことが有効な場合もある。