抄録
【はじめに】
肩関節不安定症に対し鏡視下Bankart法は多く行なわれる.術後programは約3週から4週間内旋位での装具固定を行い,ROM ExはActive-Assistiveで限定的な範囲にて術後2週から行なうことが一般的である.今回,我々は肩関節拘縮を伴う肩関節不安定症症例に対し鏡視下Bankart法を施行し,その術前・術中所見をもとに術後4日目よりROM Exを開始する超早期リハビリテーションを施行し,良好な成績が得られた症例を経験したので報告する.
【症例】
37歳,男性.平成16年,自宅にて掃除をしていて転倒し脱臼.当時は自身で整復し,以降医療機関への受診はなく過ごしていたが,脱臼感ならびに疼痛,可動域制限を主訴に平成19年2月当院受診.平成19年2月16日鏡視下Bankart法施行.
【術前所見】
ROM:Flex120°,Abd120°,1stER20° Anterior apprehension test(+),Load and shift test(Gr1+),Whipple test(+),Sulcus test(-),Dimple sign(-),ABIS test(±),Posterior jerk test(-),日本整形外科学会肩機能評価法(以下JOA score)61点,Shoulder instability score(以下JSS score)52点.
【術中所見】
鏡視にて肩甲窩2時~4時方向の関節唇損傷を確認.Bionotless anchor1本を肩甲窩3時方向に固定した.1stER,2ndER以外の方向でsutureした関節唇にstressがかからないことを確認.
【理学療法経過】
術後4日目よりROM Ex開始.ROM ExはRepairした肩甲窩3時方向の関節唇にstressがかかる1stER,2ndER以外Active-Assistiveにて積極的に施行した.並行して早期よりProprioceptive trainingも施行した.術後1ヵ月JOA score65.5点,JSS score55点,Flex115°・術後2ヶ月JOA score83点,JSS score61点,Flex150°・術後3ヶ月JOA score86.5点,JSS score77点,Flex170°・術後4ヶ月JOA score86.5点,JSS score82点,Flex180°・術後5ヶ月JOA score91.5点,JSS score84点,Flex180°・術後6ヶ月JOA score97点,JSS score94点,Flex180°.
【考察】
術前に肩関節拘縮を伴う本症例では,術後拘縮の増強が考えられた.今回の経過よりRepairした関節唇にstressがかかる方向以外であれば本症例のように術前拘縮が残存している例では,積極的ROM Exを行なう超早期リハビリテーションは有用であると示唆される.しかし,関節内運動を考えるとその適応となるのは小規模損傷であると考える.術後リハビリテーションにおいて関節唇の経時的修復状況の情報は重要であるが,これに関するヒトでの基礎研究報告はほとんどないのが現状であるため,今後の更なる検証と症例の追跡調査が必要である.