抄録
【目的】肩腱板断裂術後早期に,肩関節可動域制限を認める例をしばしば経験する.今回,肩腱板断裂術後早期の肩関節可動域制限が,術後成績にどのように影響しているかを明らかにする目的で,術後の臨床成績を経時的に調査したので報告する.
【対象】広範囲腱板断裂を除く,肩腱板断裂手術例のうち,術後12ヵ月以上を経過した100例100肩を対象とした.これらの症例から,術後2週での肩関節屈曲,外転,および90°外転位外旋の角度で以下の2群を抽出した.3方向すべてが良好な24肩を良好群,3方向すべてが不良な25肩を不良群とした.
【方法】2群間で年齢,性別,患側,断裂サイズ,肩関節可動域(ROM)および肩関節治療成績判定基準(JOAスコア)について比較検討した.なお,ROMとJOAスコアについては,術前と術後3ヵ月,6ヵ月,9ヵ月,および12ヵ月で比較検討した.検定にはマン・ホイットニー検定,Fishers PLSD検定およびカイ二乗検定を用い,危険率0.05未満を有意差ありとした.
【結果】性別では,良好群は男性12肩,女性12肩,不良群では男性6肩,女性 19肩で,2群間に有意差はなかった.手術時年齢では良好群は平均54.8歳,不良群では平均61.4歳で,2群間に有意差を認めた.術側では,良好群は右22肩,左2肩,不良群では右17肩,左8肩で,2群間に有意差を認めた.断裂サイズでは,良好群は平均2.8 cm,不良群では平均3.8cmで,2群間に有意差を認めた.屈曲可動域では良好群は術前より術後2週にかけて有意に改善を認め,術後2週でほぼROM制限がなくなった.不良群では術前より術後6ヶ月まで有意に改善するが,有意なROM制限が残存した.外転では不良群では術後6ヶ月まで有意に改善するが,有意なROM制限が残存した.外転位外旋では良好群は術前より術後2週にかけて有意に改善を認め,術後2週でほぼROM制限がなくなった.不良群では術後6ヶ月まで有意に改善するが,有意なROM制限が残存した.JOAスコアでは2群とも術後6ヵ月まで有意に改善するが,経過中に2群間で有意差を認めなかった.
【考察】術後早期のROMに影響する因子では,年齢,罹患側,断裂サイズ,および術前のROM制限の有無などであった.ROMとJOAスコアの経時的変化では,良好群のROMは,術後2週でほぼROM制限を認めなくなった.不良群のROMは,術後6ヵ月まで有意に改善するが,有意なROM制限が残存した.JOA scoreは2群とも術後6ヵ月まで有意に改善するが,経過中に2群間で有意差を認めなかった.これらのことより,術後2週でROM制限があると,将来的にROM制限を残す可能性があるので,術後6ヵ月までにROM制限をなくすように意識して理学療法を行うべきであろうと考えた.