抄録
【目的】当院では人間ドック参加者の中で希望者に対して、デジタルカメラを使用した静的立位姿勢評価と指導を医師の許可のもとで行っている。その際、明らかな整形外科的外傷・疾患がない場合でも日常生活において疼痛を訴える参加者が存在しており、疼痛発生の原因の一つにヘッドフォワードなど立位姿勢のアライメント不良によるメカニカルストレスがあると考えた。そこで健常者においての疼痛の有無と、静的立位姿勢における各ランドマークの正中線からの偏位との間に相関があるか検証したので報告する。
【方法】対象は本研究の趣旨を説明し、同意を得られた健常成人31名(男性8名、女性23名、平均年齢28.5歳±9.7歳、21~54歳、身長161.8cm±7.7cm、体重52.9cm±6.8cm)とした。立位姿勢のランドマーク(矢状面:耳垂・肩峰・大転子・膝蓋骨後方・外果前方、前額面:耳垂・胸骨頚切痕・上前腸骨棘・脛骨粗面)を設定し、左右矢状面および前額面の姿勢をデジタルカメラにて撮影した。中心線の設定は、矢状面において外果前方を中心とした床との垂線、前額面においては両母趾間の中央を中心とした床との垂線とした。ランドマークから中心線までの垂線距離を計測し、画像解析ソフトキャンバス8を使用して絶対値に置き換え数値化した。なお計測は同一検者にて行った。各被検者には疼痛や身体に感じる違和感について質問紙法にて聴取し、疼痛群12名(女性12名)、無痛群19名(女性11名、男性8名)に分別。疼痛群と無痛群の各ランドマークでの姿勢偏位量について対応のないt検定を使用し、有意水準を5%未満とした。
【結果】各被検者の疼痛部位としては、肩9名、腰6名、頚部4名、膝3名となった(複数回答)。計測値では、左右矢状面での膝蓋骨後方の位置において2群間で最大の差が得られた(左右とも1.13cm)が、統計処理を実施した結果、中心線からの偏位と疼痛の有無に関しての有意差は認められなかった。
【考察およびまとめ】今回の検証で、疼痛の有無と立位姿勢の偏位量との間に有意差が認められなかったのは、被検者の多くが事務系職員で、長時間の座位姿勢にて疼痛を訴えており、立位姿勢にはその影響が反映されないためと考えられる。また、無痛群においても中心線からの偏位があり、それらの被検者では各個人の姿勢制御により、疼痛を出さないようにコントロールしていると考える。そのため、立位姿勢・座位姿勢の偏位量と疼痛の有無との関連性を検証する必要性が示唆された。