抄録
【はじめに】
前脛骨筋の筋力低下により歩行時に下垂足や足関節背屈が不十分な症例に様々な装具が処方されるが、今回伸縮性のバンドを使って背屈を補助する「背屈バンド」を作製し、検討したので報告する。
【対象と方法】
歩行時に下垂足がみられた4症例を対象に装具を装着し、改善のみられた症例の装具装着前後の歩行をビデオで撮影し、その変化を評価した。
作製方法:厚みが5mmの伸縮性の素材(ネオプレーン)を使用し、幅5cm、長さ60cmの帯状のバンドと幅2cmのY状のバンドを作る。次に帯状のバンドの片側に3cm×4cmの(オス)マジックテープ、Y状のバンドの末端(3ヶ所)に1.5cm×1.5cmの(オス)マジックテープをそれぞれ縫い付ける。最後に帯状のバンドを横長の状態で足底部に敷き、両端を足背部でクロスさせるところで1箇所に5.5cmの切れ目を入れる。
装着方法:帯状のバンドを横長の状態で足底部に敷き、両端を足背部でクロスさせ、片端を切れ目に入れ込みながら下腿末端部で固定する。次にY状のバンドの1端を足底部で固定し、足関節を背屈位にした状態で足底部から母趾と第2趾間を通らせて他の2端を足背部で固定する。
【症例紹介と結果】
症例1.63歳、女性、疾患:ANCA、感覚障害(+)、足関節背屈筋力(MMT):右P 左P、歩行レベル:1本杖歩行、
装具装着後の変化:踵接地時の背屈軽度改善
症例2.58歳、男性、疾患:第4腰椎分離症術後、感覚障害(+)、足関節背屈筋力(MMT):右P 左P、歩行レベル:1本杖歩行、装具装着後の変化:踵接地時の背屈改善
症例3.51歳、男性、疾患:第4腰椎ヘルニア、感覚障害(-)、足関節背屈筋力(MMT):右P 左N、歩行レベル:独歩、装具装着後の変化:踵接地時の背屈改善
症例4.73歳、男性、疾患:頚椎後縦靭帯骨化症術後、感覚障害(-)、足関節背屈筋力(MMT):右N 左F-、歩行レベル:独歩、左アンクルクローヌス(±)、装具装着後の変化:踵接地時の背屈不変
【考察】
今回考案した足関節背屈バンドは背屈筋力の弱い下垂足の症例に対しては有効であったが、アンクルクローヌスが出現するような症例には効果はみられなかった。このことからアキレス腱反射の亢進していない背屈筋力の弱い下垂足の症例に対して本装具は有効であると考えられる。また、本装具は作製が容易で臨床で簡単に使用できるので下垂足のみられる症例の歩行訓練等に有用と思われる。