理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 146
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骨・関節系理学療法
足関節内反捻挫後の復帰期間の検討
X線画像より
竹内 明禅用皆 正文中村 裕樹五十峯 淳一八反丸 健二
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抄録

【目的】足関節内反捻挫はスポーツ競技に限らず日常生活においても多くみられる外傷である。臨床上、X線において脛骨と腓骨の離開と脛骨に対する腓骨のアライメントに変化を認める場合がある。そこで、脛骨と腓骨のアライメントが受傷後の回復時期へ影響を及ぼすのではないかと考えた。
今回、内反捻挫後のスポーツ競技復帰及び日常生活復帰までの日数(以下、復帰期間)を調査し、X線上での定量的測定値がどのように復帰期間と関係があるのかを研究したので報告する。
【方法】対象は、当院にて足関節内反捻挫と診断を受けた38名(以下、N群:男性21名・女性17名、平均年齢:34.2±19.7歳)とし、障害度は1度:10名、2度:22名、3度:6名で全て受傷後1±0.91日以内に受診した新鮮例とした。また、対象群としては足関節に器質的な問題のない健常人38名(以下、C群:男性19名・女性19名、平均年齢:26.8±5.58歳)とした。
方法は足関節X線正面像よりa.正面天蓋角b.内果傾斜角c.果間傾斜角d.外果傾斜角(脛骨長軸に対して腓骨下端と距骨上外側を結んだ角度)e.脛腓骨間距離の5項目を実測した。以上よりN群とC群での各々の測定値についてt検定を用いて比較検討し、N群に関しては障害度別に復帰期間に対する相関係数をピアソン積率相関分析にて分析した。
【結果】
1.C群と比較してN群のd、eは有意に高値を示した。(p<0.01・p<0.01)
2.N群において2度のd・e、3度のdは復帰期間に対してそれぞれ高い相関を認めた。(r=0.73・r=0.67、r=0.83)
【考察】結果1より、足関節内反により距骨は回外に加えて水平面上での回旋や前外方への突出が起こる。その為、外力に対する骨性の制動が減少していることが考えられ、靭帯・軟部組織に伸張応力が集中し脛腓靭帯結合へのメカニカルストレスが生じる。JB Billysによると脛腓靭帯結合は広範囲に小束(4箇所)を持ち、足関節内反捻挫で最も損傷を受けやすいと述べている。さらに前述した距骨の動きで脛骨・腓骨間の離開が生じるため骨性支持機構への影響が推測され、脛骨に対する腓骨のアライメントに変化が生じたことが考えられる。
次に2度の損傷は、脛骨・腓骨間の離開により遠位脛腓関節の不安定性をきたすことが予想され、距腿関節の靭帯による機能的安定化に大きな影響を及ぼすのではないかと考える。よって、足関節全体が特異性機能不全に陥ることが推測され、脛骨・腓骨間に関わる測定項目d・eが復帰期間に影響したのではないだろうか。また、3度の損傷では外側側副靭帯機構の複合損傷を伴うことが考えられ、脛骨・腓骨間の離開よりも脛骨に対する腓骨のアライメントがより復帰期間に影響するものと予想する。
今回の調査で内反捻挫時に脛腓骨間距離と外果傾斜角を計測することで復帰までの足部の機能的回復とパフォーマンスへの影響を推測することができるのではないかと考える。


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© 2008 日本理学療法士協会
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