理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 175
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骨・関節系理学療法
投球後の肩関節可動域の経時的変化
松本 剛濱田 太郎上野 隆司
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抄録

【目的】
野球選手の投球側肩関節可動域は、投球動作の繰り返しによって非投球側に比べ外旋角度は増大し、内旋角度は減少していると諸家により報告されている。また投球後に一時、内外旋肩関節可動域が低下することも知られている。しかし、投球直後から経時的に肩関節可動域を追跡調査した報告は少なく、効果的なクールダウン、コンディショニングを行うためには十分な情報とは言えない。そこで我々は、投球前後に肩関節可動域がどのように変化するのかを調査したので報告する。
【対象と方法】
野球経験があり、肩関節に既往歴のない男性(20.5±0.8才)8名を対象とし、連続した75球の投球を行わせ、投球前、投球直後、1日後、2日後、3日後、4日後に肩関節可動域を測定した。測定内容は仰臥位にて90°外転位での外旋(以下2nd外旋)および内旋(以下2nd内旋)、90°水平屈曲位での内旋(以下3rd内旋)とした。測定期間中は特別なコンディショニング等は行わないものとした。統計学的検討は多重比較検定を用い、いずれも有意水準5%とした。
【結果】
投球側2nd外旋は、投球前136.3°±1.9°投球直後142.5°±3.1°1日後130.6°±5.0°2日後125.6°±3.1°3日後129.4°±3.8°4日後137.5°±3.1°であった。2nd外旋は投球直後と1日後、投球直後と2日後、投球直後と3日後、2日後と4日後に有意差がみられた。2nd内旋投球前79.4°±5.6°投球直後86.3°±4.4°1日後70.0°±5.0°2日後74.4°±3.8°3日後81.9°±4.4°4日後92.5°±5.0°であった。2nd内旋は投球前と4日後、投球直後と1日後、1日後と4日後、2日後と4日後に有意な差が認められた。3rd内旋においては有意な差は認められなかった。
【考察】
2nd内外旋可動域は投球前と投球直後に有意差は認められず、むしろ投球直後に増加する傾向が認められた。また2nd内外旋可動域は、投球直後と1日後に有意差が認められた。したがって、投球動作で起こる筋疲労がもたらす可動域制限は投球直後から出現せず、翌日から出現することが伺えた。2nd外旋可動域は投球直後と比較すると1日後、2日後、3日後で有意差があり、4日後は有意差が認められなかった。2nd内旋可動域は投球直後から1日後、2日後、3日後、4日後で有意差が認められた。このことから外旋可動域に比べると内旋可動域の回復が遅れるといえる。この原因は、投球動作のフォロースルー期に肩外旋筋が遠心性に収縮することや、肩内旋筋と比較して筋の量が少ないことから肩内旋筋に比べ肩外旋筋の疲労が大きくなり、内旋可動域の回復を遅らせたと考える。

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© 2008 日本理学療法士協会
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